特定技能「素形材産業」の制度概要と外国人雇用の実務ポイント

日本の製造業を支える素形材産業では、深刻な人手不足が続いており、その解消策として注目されているのが「特定技能」制度です。

本記事では、特定技能「素形材産業」の概要や対象業務、試験制度、受け入れ企業の条件など、外国人材を雇用するうえで押さえるべき実務ポイントを網羅的に解説します。求人戦略や長期的な人材確保の手段として、制度の理解と活用が企業の競争力向上に直結します。

特定技能「素形材産業」の制度概要と導入の背景

2019年の出入国管理法改正により、新たに創設された「特定技能」在留資格は、一定の技能と日本語能力を有する外国人に対し、日本国内での中長期的な就労を可能にしました。

素形材産業はその対象分野の一つで、金属加工や機械製造などの工程において、熟練度の高い作業を担う人材が求められています。特定技能1号の在留資格では、最大5年間の就労が可能で、即戦力となる人材の雇用が可能です。

日本の素形材産業が直面する深刻な人材不足

高倍率の求人と労働力の慢性的不足

素形材産業に関連する職種の有効求人倍率は2.8倍以上となっており、特に鋳造、金属プレス、機械加工といった技能を要する分野では、国内人材の確保が困難です。

経済産業省の調査によれば、製造業における人手不足の影響で、約3割以上の企業が業務に支障をきたしていると回答しています。2025年には、この分野で約6万人の労働力が不足すると予測されています。

特定技能「素形材産業」で認められる業種と業務内容

就労が可能な14の製造業種

特定技能「素形材産業」で従事できる業種は、以下の14業種に分類されており、求人の際はこの枠に沿った業務であることが前提となります。

  • 鋳型製造業
  • 鉄・非鉄金属素形材製造業
  • 作業工具製造業
  • 金属熱処理業
  • 工業窯炉製造業
  • 金属用・非金属用金型製造業
  • その他の産業用電気機械器具製造業 など

求人に適用される13の技能業務

外国人が特定技能資格で行える業務は、次の13の技能分野に該当します。

  • 鋳造
  • 鍛造
  • ダイカスト
  • 機械加工
  • 金属プレス加工
  • めっき
  • アルミニウム陽極酸化処理
  • 機械保全
  • 溶接
  • 仕上げ
  • 塗装
  • 工場板金
  • 機械検査

関連業務も雇用対象に含まれる可能性がある

加工後の検査や工具のメンテナンスなど、日本人従業員が通常行う付随作業も、外国人労働者に任せることが認められています。

特定技能人材として雇用できる外国人の条件

年齢や技能、在留資格の条件を確認

外国人を雇用するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 18歳以上であること
  • 試験に合格していること(日本語・技能)
  • 在留資格に違反していないこと

ただし、以下のような人物は受験資格が認められないため、雇用できません。

  • 留学中に退学や除籍となった者
  • 技能実習からの失踪者
  • 短期滞在の在留資格保有者
  • 特定活動(起業・インターンシップ等)による在留中の者(一部を除く)

特定技能人材の採用方法と資格取得支援の手段

実務で使える4つの受け入れルート

企業が求人を出す際には、以下のようなルートで候補者を確保し、特定技能の資格取得を支援することができます。

1. 国内留学生への試験支援

日本語能力がある程度高く、日本の生活にも慣れているため、早期戦力化が期待できます。

2. 技能実習2号修了者からの移行

既に実務経験がある人材を特定技能として再雇用する方法で、現場への適応もスムーズです。

3. 海外での試験合格者を招聘

海外現地での評価試験・日本語試験に合格した人材を、日本に呼び寄せて雇用します。

4. 短期来日による試験受験支援

候補者を一時的に来日させ、国内で試験を受けさせた後に雇用する方法です。

雇用形態は直接雇用が必須、派遣は不可

労働契約は日本人と同等以上の待遇が必要

特定技能「素形材産業」では、雇用形態として「直接雇用」が原則です。派遣形態での雇用は制度上認められていません。

また、給与や待遇は、日本人従業員と同等以上である必要があります。これは技能の公平な評価と、就業環境の整備を目的とした制度の根幹です。

転職のルールと制限事項を正確に理解する

同業種間であれば転職は可能

特定技能の在留資格を持つ外国人は、同一の業務区分内での転職が認められています。ただし、異なる産業分野への転職や、副業・アルバイトは禁止されています。

複数分野の特定技能を取得している場合は、在留資格変更の手続きを行うことで転職も可能です。こうした点は、求人を行う企業側も事前に理解しておく必要があります。

評価試験の内容と合格基準を把握しておく

試験は9カ国語に対応、現地語で実施

試験は「学科」と「実技」に分かれており、経済産業省の監修で実施されます。合格基準は次の通りです。

  • 学科試験:65%以上の正答率
  • 実技試験:60%以上、またはJIS規格に基づく判定

出題は英語・ベトナム語・インドネシア語など、9カ国語に対応しており、候補者の母語で受験が可能です。

試験日程と開催地の情報はこまめに確認を

情報は経済産業省公式サイトで随時更新

試験日程や開催地は、経済産業省の特設ページで告知されます。コロナ禍の影響などで予定が流動的になる場合もあるため、求人の計画を立てる際には最新情報を確認することが重要です。

特定技能所属機関(受け入れ企業)の要件と義務

協議・連絡会への加入が必須要件

素形材産業で外国人材を受け入れる企業は、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」に加入する必要があります。この組織は、経済産業省や法務省が連携して運営しており、外国人材の適正な受け入れと雇用環境の確保を目的としています。

また、企業が属する産業分類が日本標準産業分類に適合していることも確認されます。定期的な報告義務や調査協力の要請にも対応する責任があります。

まとめ

特定技能「素形材産業」は、製造業における慢性的な人材不足を補うための現実的かつ制度的に整備された仕組みです。制度の正確な理解と、適切な採用・求人活動を行うことで、企業は長期的な戦力となる外国人材を確保できます。

今後ますます重要性が高まるこの分野において、受け入れ体制の構築と人材育成は、企業の持続的成長に直結する戦略的取り組みとなるでしょう。