特定技能「造船・舶用工業」は、深刻な人手不足が続く造船分野において外国人材を受け入れる新たな制度です。本記事では、制度の概要、受け入れ条件、対象業務、試験内容、雇用形態など、企業が理解しておくべき基本情報を網羅的に解説します。
特定技能「造船・舶用工業」の概要
2019年4月の入管法改正により、新たな在留資格「特定技能」が創設され、造船・舶用工業分野でも外国人材の受け入れが可能となりました。この制度は、労働力不足が深刻な業種において、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を即戦力として雇用できる仕組みです。
政府は2025年度までに最大36,000人の外国人を受け入れる方針を示しており、制度の活用が急速に進んでいます。
造船・舶用工業分野における人手不足の現状
地域的な課題と有効求人倍率
造船業が盛んな地域では、少子高齢化に伴う若年層の減少や都市部への人口流出により、人材確保が困難になっています。主要職種の有効求人倍率は以下の通りで、深刻な人手不足が浮き彫りとなっています。
- 溶接:2.5倍
- 塗装:4.3倍
- 鉄工:4.21倍
- 仕上げ:4.41倍
- 機械加工:3.45倍
- 電気機器組立て:2.89倍
このままでは数万人規模の人手不足が懸念されており、外国人材の活用が急務となっています。
特定技能として受け入れ可能な外国人材の条件
必要な資格・条件
特定技能として受け入れるためには、以下のいずれかの条件を満たすことが必要です。
- 技能実習2号を良好に修了している
- 技能評価試験と日本語能力試験(N4相当以上)に合格している
さらに、健康状態が良好で18歳以上であること、過去に留学除籍や失踪歴がないことなどが条件に含まれます。
資格取得の方法
外国人材が在留資格「特定技能」を得る主な方法は以下の4つです。
- 国内在住の留学生への試験支援
- 技能実習2号修了者の資格移行
- 海外での試験実施による取得
- 短期来日による試験受験支援
それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、企業の状況に応じた戦略が求められます。
特定技能「造船・舶用工業」の対象業務
受け入れ可能な業務は、以下の6分野に分類されます。
- 溶接(手溶接、半自動溶接など)
- 塗装(金属塗装、噴霧塗装など)
- 鉄工(構造物鉄工作業など)
- 仕上げ(金型・治工具仕上げなど)
- 機械加工(旋盤、マシニングセンタなど)
- 電気機器組立て(配電盤、モーターなどの組立て)
本来業務に付随する関連作業(資材運搬や清掃など)への従事は可能ですが、付随業務のみを主として行わせることは禁止されています。
受け入れ企業の要件
所属機関としての条件
企業が外国人を受け入れるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 労働・社会保険・租税法令の遵守
- 非自発的離職者や行方不明者の発生がないこと
- 特定技能協議会への加入
- 特定技能外国人の活動内容の記録と保存
- 外国人に違約金・保証金を課さない
- 支援費用の外国人負担禁止
- 適切な支援体制の整備
- 報酬は日本人と同等以上
また、国土交通省の指定する「造船・舶用工業分野特定技能協議会」の構成員になる必要があります。
雇用形態と報酬の基準
雇用形態は直接雇用のみ
派遣契約での受け入れは認められておらず、特定技能人材はすべて直接雇用である必要があります。
報酬は日本人と同等以上
特定技能人材に支払う賃金は、日本人が同一業務に従事した場合と同等以上であることが義務づけられています。
特定技能外国人の転職制度
特定技能1号の在留資格を持つ外国人は、同一分野内であれば転職が可能です。ただし、他業種への転職や副業・アルバイトは禁止されています。
複数分野の特定技能資格を持つ場合は、在留資格の変更申請が必要になります。
特定技能「造船・舶用工業」の試験内容
技能評価試験
造船・舶用工業分野の試験は、学科試験と実技試験に分かれています。問題は日本語で出題され、作業手順や安全管理、工具の知識などが問われます。
日本語能力試験
日本語力はN4レベル(基本的な日常会話ができるレベル)が求められます。試験はJLPT(日本語能力試験)またはJFT-Basic(国際交流基金基礎日本語テスト)で受験可能です。
試験申し込みと実施方法
試験は国内外で実施されており、希望地での試験開催も可能です。受験者は満17歳以上で、在留資格を有している必要があります。
最新の試験情報やサンプル問題は、ClassNKの公式サイトから確認可能です。
まとめ
特定技能「造船・舶用工業」制度は、人手不足に悩む業界にとって重要な外国人材受け入れ策です。制度の正確な理解と適切な準備により、即戦力人材を確保し、現場の安定的な運営が期待できます。受け入れ企業は法令遵守や支援体制の構築に注力し、制度を有効に活用することが求められます。
導入を検討している企業は、試験制度や雇用条件などの最新情報を随時確認し、円滑な人材採用と雇用維持を目指しましょう。
