外国人材の採用が広がる中で、特に「特定技能」制度は即戦力人材の確保手段として注目されています。本記事では、特定技能制度の概要や採用のメリット・注意点、業種別の雇用条件、採用フロー、雇用形態やコストに関するポイントをQ&A形式でわかりやすく整理します。求人活動に特定技能人材を検討している企業の参考になる情報を網羅的にまとめました。
特定技能とは?基礎知識と採用の利点
特定技能の制度概要と採用の特徴
「特定技能」とは、日本の人手不足分野で外国人労働者を受け入れるための在留資格で、12の特定産業分野に限られています。対象となる外国人は、分野別の試験や日本語能力試験(N4以上)を通過しており、一定水準の技能と日本語力を有しています。
採用のメリット・デメリット
メリット
- 技能試験や日本語試験を通過しており即戦力が期待できる
- 働く意欲が高く、業務への順応も早い傾向
デメリット
- 言語・文化の違いによる誤解やミスのリスク
- 企業側に最低限の受け入れ体制の構築が必要
外国人と企業が互いに文化を理解し歩み寄ることで、早期定着やトラブル回避に繋がります。
特定技能の対象業種と雇用形態
採用可能な12の産業分野
以下の分野での雇用が認められています。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材・産業機械・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
※特定技能2号は介護分野以外の分野で認められています。
雇用形態の条件と留意点
特定技能外国人は、契約社員・パート・アルバイトとしての雇用も可能ですが、以下の条件を満たす必要があります。
- 直接雇用であること(派遣は農業・漁業を除き不可)
- フルタイム(週30時間以上・年間217日以上)
- 日本人と同等以上の給与
名称が「アルバイト」でも、実質的にフルタイム勤務であれば制度上問題ありません。
採用から入社までの流れと支援体制
特定技能採用フローの概要
採用から入社までの一般的な流れ:
- 募集・選考
- 内定
- 在留資格申請
- 渡航準備
- 入社
このプロセスの中で、支援計画の実施が制度上義務づけられており、企業が直接実施するか、登録支援機関に委託する必要があります。
所要期間とスケジュール感
- 内定から入社までは約3.5〜6カ月
- 在留資格審査が混雑する時期は遅延する場合あり
スムーズな入社を実現するには、支援体制の整備がカギとなります。
特定技能2号の拡充とその意義
1号と2号の違い
| 区分 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 最大5年 | 制限なし |
| 家族帯同 | 不可 | 可(条件付き) |
| 雇用条件 | 一定の技能 | 熟練技能が必要 |
2号資格は、熟練した外国人の長期雇用が可能であり、企業にとっては定着率向上にも寄与します。
コストと住居支援の注意点
登録支援機関の委託費用
技能実習と異なり監理団体への支払いは不要ですが、登録支援機関を活用する場合は以下のような費用がかかります。
- 月額平均:28,386円/人
- 初期費用は別途発生
支援内容の質が職場定着に影響するため、単価だけでなく支援体制全体を比較することが重要です。
住居手配と企業の対応
国内在住者の採用では住居手配の義務はありませんが、外国人が自力で物件契約するのは難しい場合が多く、企業による社宅や寮の提供が推奨されます。
- 応募増加の効果がある
- 保証会社利用時の費用は企業負担が原則
採用時の実務Q&A:よくある質問
Q. 夜勤専従の勤務は可能ですか?
可能です。日勤・夜勤の切り替えも認められており、勤務形態に柔軟性があります。
Q. 外国人の転職リスクは?
文化的背景から転職への抵抗が少なく、日本人よりも転職率は高い傾向です。定着には職場支援や信頼構築が重要です。
業種別雇用の具体的なポイント
外食業での雇用条件
日本標準産業分類における「飲食店」または「持ち帰り・配達飲食サービス業」に該当し、飲食営業許可のある施設が対象です。接待行為がある業種は対象外です。
宿泊業での業務範囲
フロント業務が主であれば、付随業務としてのベッドメイキングは可能。メイン業務としての清掃は対象外となります。
介護分野の条件
訪問介護サービスは対象外。有料老人ホームの一部では受け入れ可能。施設種別によって制限があるため、詳細は事前確認が必要です。
採用対象国の選び方と注意点
国籍での制限は設けてはいけませんが、現地制度や手続きの容易さで国を選ぶのは現実的な判断です。
- 各国には独自の申請ルールや認可機関が存在
- フィリピンでは面接や申請に英語対応が必要な場合も
インドネシア、ミャンマー、ネパールなど、外国人労働者数が増加している国からの採用が目立ちます。
日本語能力の基準と実務レベル
特定技能1号では日本語能力試験(JLPT)N4以上が要件です。N4のレベルは以下の通りです。
- 基本的な日本語を理解できる
- 日常的な話題の文章の読解が可能
- ゆっくりした会話なら理解できる
簡単な業務指示であれば、業務遂行に支障は少ないとされています。
まとめ
特定技能制度を活用することで、企業は必要な業務に即戦力となる外国人材を確保できます。ただし、採用には支援体制や在留資格手続き、業種ごとの条件を正確に理解することが不可欠です。適切な対応と支援体制の整備が、外国人労働者の定着率や業務効率に大きく影響します。採用計画を立てる際には、制度全体の流れと要件を踏まえた準備が重要です。
