特定技能「飲食料品製造業」とは?業務範囲と雇用条件・求人対策を詳しく解説

外国人材の活用が進むなか、特定技能「飲食料品製造業」は食品製造業界における人手不足の解消手段として注目を集めています。本記事では、対象業務やスーパーマーケットでの就業可否、雇用に必要な要件、求人時の留意点などを分かりやすく解説します。

特定技能「飲食料品製造業」の制度概要と導入背景

外国人が即戦力として働ける在留資格

特定技能「飲食料品製造業」は、即戦力となる外国人材を食品製造現場に受け入れるための制度で、2019年の制度創設時から対象分野の一つとして位置付けられています。日本国内の少子高齢化により深刻化する労働力不足を補うため、食品製造の現場では外国人労働者の雇用ニーズが急速に高まっています。

技能実習制度からの移行が進む

かつて主流だった技能実習制度は、業務範囲が限定的で柔軟な労働配置が難しいという課題がありました。これに対し、特定技能制度ではより広範囲の業務に従事でき、転職も可能となることから、制度としての自由度が高まっています。コロナ禍の影響で母国に帰れなくなった技能実習生が特定技能へと在留資格を変更するケースも多く、経験豊富な人材が現場に残る形での雇用が進んでいます。

特定技能「飲食料品製造業」の業務内容と対象業態

対象となる食品製造業の範囲

特定技能「飲食料品製造業」では、酒類を除く飲食料品の製造・加工・安全衛生管理など、食品の生産工程全般が対象となります。対象となる業種は、以下のように多岐にわたります。

  • 畜産・水産・農産加工業
  • 菓子・パン製造業
  • 調味料、糖類、油脂、冷凍食品等の製造
  • 清涼飲料や豆腐・かまぼこ等の加工食品の製造
  • 食品製造機能を持つスーパーマーケットや小売業のバックヤード

スーパーマーケットでの就業条件と制限

2024年3月の基準改正により、総合スーパーマーケットや食料品スーパーマーケットのバックヤードにおいて食品製造業務を行う場合、特定技能の対象となることが明確化されました。ただし、以下の業務は引き続き対象外です。

  • レジ業務や接客対応
  • 他社製品の品出し・陳列・販売
  • コンビニ、ドラッグストア、百貨店での業務

小売業内のテナント出店者は対象外

スーパーマーケット内に出店している独立したテナント業者は、対象業種に該当しません。日本標準産業分類上「料理品小売業」に分類されるため、特定技能制度による就労は不可となっています。

外国人材を特定技能で雇用するための企業要件

受け入れ企業に課される3つの条件

外国人材を雇用する企業は、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 食品産業特定技能協議会への加入
  2. 協議会の活動への協力(情報発信・地域調査など)
  3. 農林水産省が主導する調査への協力

支援業務を外部に委託する場合の条件

自社で外国人材の支援体制を構築できない場合は、農林水産省が認定した「登録支援機関」に業務を委託する必要があります。この登録支援機関は、特定技能の受け入れに関するガイダンス、生活支援、日本語学習支援などを担います。

支援体制の整備は義務

支援内容には、空港送迎、日本語学習の機会提供、住居探しの補助、相談窓口の設置などが含まれます。これらの対応を怠ると、在留資格の認定が下りない場合もあるため、制度理解と対応準備が不可欠です。

求人活動の注意点と採用の成功ポイント

飲食料品製造業は人気分野である一方、競争も激しい

「飲食料品製造業」は、清潔な職場環境や一定の作業リズムがあることから、外国人求職者から人気の高い分野です。そのため、求人票の条件設定が適正でなければ、応募が集まらないこともあります。

求人票作成のポイント

  • 日本人と同等の賃金水準を提示する(同一労働同一賃金)
  • 勤務地・仕事内容・福利厚生を明確に記載
  • 試験合格者や技能実習修了者を意識した募集文にする

住居支援が採用力を左右する

外国人材の多くは、賃貸契約のハードルが高く、住まいの確保に苦労する傾向があります。そのため、企業側で寮や社宅を用意することが、求人競争力の大きなアドバンテージになります。

寮がない場合の対応策

  • 賃貸契約時の企業同行
  • 保証人の引き受け
  • 賃貸業者との連携による外国人対応住宅の紹介

こうしたサポートは、在留資格認定時にも評価されるため、雇用の安定化にも寄与します。

特定技能1号の取得方法と必要な試験

技能試験と日本語試験への合格が必要

特定技能「飲食料品製造業」1号を取得するためには、以下の試験に合格しなければなりません。

  • 特定技能1号技能測定試験(飲食料品製造業分野)
  • 日本語能力試験N4以上 または 国際交流基金日本語基礎テスト

前者は衛生管理や計画立案能力を図る実技・学科の試験で、後者は日常会話レベルの日本語力を問う試験です。

技能実習修了者は試験免除の対象に

過去に技能実習(2号または3号)を「良好に修了」した人材は、技能試験と日本語試験が免除されます。この移行パターンは非常に多く、実務経験があり即戦力として期待できる人材が多いことが特徴です。

特定技能2号の取得には管理経験が必要

より高度な職務を担うための要件

特定技能2号を取得するには、技能測定試験の合格に加え、以下の実務経験が求められます。

  • 2年以上の管理者相当の業務経験
  • 複数人の作業員を指導・監督した実績

役職例としては「班長」「ライン長」などが想定され、工程の管理能力が審査対象となります。

試験は企業を通じてのみ受験可能

現在、特定技能2号の技能試験は個人での申請が認められておらず、雇用企業を通じた申請が必要です。採用後のキャリアパスとして2号取得を見据えた雇用計画を立てることが、定着支援にもつながります。

HACCPを含む衛生管理知識も求められる

2021年から全ての飲食業・食品製造業者に対し、HACCP(ハサップ)に基づく衛生管理が義務付けられました。特定技能外国人にもこの知識が求められます。

求められる3つの衛生管理スキル

  1. 食中毒菌や異物混入の防止に関する基本知識
  2. 衛生的な食品取り扱いの実践スキル
  3. 設備や環境の衛生管理手法の理解

これらは技能試験の中でも問われるため、採用後の研修でも重点的に教育することが推奨されます。

まとめ:求人戦略と支援体制が雇用の成否を分ける

特定技能「飲食料品製造業」は、外国人材・企業の双方から高い関心を集める分野であり、今後の労働市場においても重要な位置を占めます。技能実習からの移行が進むことで、すでに日本での就業経験がある外国人材を雇用しやすい環境が整いつつあります。

しかし、需要の高まりに比例して企業間での人材確保競争は激しくなります。優秀な人材を採用し、長期的に定着してもらうためには、求人内容の明確化、支援体制の整備、そして住環境への配慮といった点が極めて重要です。特定技能制度を正しく理解し、効果的に運用することが、企業の持続的な成長と人材戦略の成功につながるでしょう。