技能実習から特定技能へ移行するための条件と雇用手続きの完全ガイド

外国人労働者の在留資格「技能実習」から「特定技能」へ移行することで、実習生が日本でさらに長く働けるようになります。これは、慢性的な人手不足に悩む業種にとって、即戦力を確保し続けるための重要な制度です。本記事では、移行のために必要な条件、雇用契約の手続き、求人現場での活用方法、メリット・デメリットまでを網羅的に解説します。

技能実習と特定技能の制度の違いを正しく理解する

技能実習制度は人材育成と国際協力が目的

「技能実習」は、本国での経済発展に貢献することを目的に、日本で技能や知識を学んでもらう制度です。労働力の供給ではなく、あくまで“実習”としての位置づけであるため、原則的には実習終了後に帰国が求められます。

対象となる業種は、農業、建設、介護などで、実習期間は最大5年間です。転籍・転職は基本的に認められておらず、就労先も監理団体のもとで厳しく管理されています。

特定技能制度は人手不足を補う即戦力確保のための制度

「特定技能」は、2019年に導入された新たな在留資格で、慢性的な人手不足が深刻な14業種において、外国人労働者を即戦力として受け入れるための制度です。

特定技能1号は最長5年間の在留が可能で、技能実習とは異なり、業務の変更や転職も可能です。介護や外食業など、求人倍率が高い業界での活用が進んでいます。

技能実習から特定技能へ移行できる条件とは

良好な修了と業務の関連性がカギになる

技能実習から特定技能への移行には、次の2つの要件が必要です。

  • 技能実習2号を良好に修了していること
  • 実習時の職種・作業内容と、特定技能1号での業務内容に関連性があること

これらを満たす場合は、特定技能に必要とされる「技能試験」と「日本語試験」が免除されます。関連性が低い場合でも、日本語試験だけが免除されることもあります。

業種ごとに移行可能な分野を確認する必要がある

技能実習で行っていた業務が、必ずしも特定技能の対象となるとは限りません。例えば、技能実習にはあるが特定技能にはない作業(例:タイル貼り)は移行対象外です。移行前には、対応する業種が特定技能の14分野に含まれているかを確認する必要があります。

特定技能制度で受け入れ可能な14の産業分野

現在、特定技能制度において移行や新規雇用が認められている業種は以下の14分野です。

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 素形材・産業機械製造・電気・電子情報関連産業
  4. 建設
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備
  7. 航空
  8. 宿泊業
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業
  13. 林業
  14. 水産加工業

それぞれの業種で必要とされる技能水準や手続きが異なるため、業界ごとに詳細を確認することが重要です。

雇用契約から在留資格変更までの手続きの流れ

企業が行うべき主なステップ

技能実習生を特定技能外国人として受け入れる場合、以下の流れで手続きを進めます。

  1. 特定技能外国人と雇用契約を締結
  2. 特定技能支援計画を作成、または登録支援機関と委託契約
  3. 事前ガイダンスの実施と健康診断の受診
  4. 分野や国ごとに必要な追加要件を確認し、必要書類を準備
  5. 出入国在留管理庁へ在留資格変更許可申請を提出

申請には2〜3か月かかる場合もあり、在留期限を見据えて早めに準備することが求められます。

特例措置「特定活動(4か月)」の活用方法

在留期間満了前に変更手続きが完了しない場合、「特定活動(4か月)」への変更が認められる特例があります。この措置を利用すれば、受け入れ企業で就労を継続しながら手続きを完了させることができます。

雇用側にとってのメリットと実務上の留意点

特定技能へ移行する最大のメリットは継続的な戦力確保

  • 業務に慣れた実習生が引き続き働くことができる
  • 人数枠の制限がない(介護・建設を除く)

これにより、求人活動の頻度を減らし、採用・教育にかかる負担を軽減することができます。とくに定着率が高ければ、高い生産性が期待できます。

雇用コストの増加と制度遵守の必要性

特定技能外国人には、日本人と同等以上の賃金が求められます。技能実習より高い報酬設定が必要なため、人件費の見直しが必要です。

また、雇用契約の変更や特定技能外国人の活動内容に関する報告は、四半期ごとに出入国在留管理庁へ届け出る義務があります。虚偽の報告や怠慢は、罰則の対象となるため注意が必要です。

分野や国ごとの追加要件への対応が移行成功の鍵

建設など一部分野には上乗せ基準がある

建設業では「建設特定技能受入計画」の認定が必要で、国土交通省への申請やキャリアアップシステムへの登録が義務付けられています。このように、業界ごとに求められる書類や認定制度が異なるため、詳細な確認と準備が欠かせません。

国ごとに異なる手続きにも注意が必要

現在、日本は13か国と特定技能に関する二国間協定を結んでいます。例えば、ベトナム人材を雇用する場合、日本大使館での推薦者表の取得が必要です。国ごとに書類や申請先が異なるため、関係機関への事前確認が不可欠です。

求人活動に特定技能をどう活かすか

特定技能制度を活用すれば、求人活動の幅を広げ、労働市場における競争力を高めることができます。技能実習から移行した外国人材は、すでに日本での業務や生活に慣れているため、求人・教育コストを大幅に削減できます。

また、転職が可能な制度であるからこそ、「この企業で働き続けたい」と思わせる職場環境づくりが、長期雇用の実現につながります。企業が人材定着のために取り組むべき課題も、今後さらに重要性を増していくでしょう。

まとめ

技能実習から特定技能への移行は、人手不足の中、優秀な外国人に長く働いてもらいたい会社にとって良いシステムだと思います。

ただ、特定技能へ移行することで転籍・転職可能となり外国人も会社を選べるようになります。そのため、より長く会社にいることを選んでもらえるよう、モチベーションを維持するような仕組みや体制作りがますます必要となるでしょう。