外国人を雇用する際に検討される「特定技能」と「技能実習」は、制度の目的から就労範囲、在留期間、転職可否、受け入れ方法、家族帯同の可否まで大きな違いがあります。本記事では、制度設計の背景から雇用企業が留意すべき具体的な相違点まで、6つの視点から両制度を比較し、求人や雇用戦略に役立つ情報を整理しています。
特定技能と技能実習の制度的な違いを知ることが雇用の第一歩
外国人労働者を採用する企業にとって、「特定技能」と「技能実習」の制度的な違いを理解することは、適切な求人活動と円滑な雇用のために欠かせません。見た目には似ているこの2つの在留資格ですが、目的や運用、外国人材の権利・待遇などに大きな差があります。制度の選択を誤ると、違法雇用や早期離職などのリスクにもつながりかねません。
制度の目的が根本的に異なる:特定技能と技能実習の制度設計
特定技能と技能実習の最も大きな違いは、その制度設計の目的にあります。
特定技能は「労働力不足の解消」が目的
特定技能制度は、2019年に設けられた在留資格で、労働力不足が深刻な分野において、即戦力となる外国人を受け入れるために設計されました。採用した外国人は、企業の労働力としてカウントされ、通常の雇用関係の中で働くことが前提です。
技能実習は「国際協力」が主な目的
一方、技能実習制度は1993年に導入され、主に開発途上国に対する技術移転を通じた国際貢献を目的としています。就労そのものが目的ではなく、日本の技能を習得し、母国に持ち帰ることが前提です。
就労可能な業種と業務範囲に大きな差がある
外国人を雇用する際には、制度ごとに認められている業種と業務範囲を把握する必要があります。
特定技能は12分野で幅広い業務に対応
特定技能では、介護、外食業、農業、建設業などの12分野(将来的には16分野予定)での就労が可能です。職種ごとの細かい制限は比較的少なく、実際の業務範囲に柔軟に対応できます。
技能実習は細分化された職種と作業内容に限定
技能実習では、85職種・156作業に分類されており、該当する作業以外の業務を行わせることは原則禁止です。雇用主が意図せず業務範囲を逸脱すると、制度違反となる可能性があります。
在留期間と更新条件の違いが雇用の安定性に影響
外国人を長期的に戦力として雇用する場合、在留期間とその更新条件は重要な要素です。
特定技能は更新が可能で長期雇用にも対応
- 特定技能1号:通算5年間の在留が可能(1年ごとの更新)
- 特定技能2号:更新制限なし。永続的な雇用も視野に入る
2号への移行により、実質的に無期限での雇用も可能となるため、定着率向上にもつながります。
技能実習は原則5年が上限で、更新に試験が必要
- 技能実習1号:最長1年
- 技能実習2号:最長2年
- 技能実習3号:最長2年
2号・3号への移行には、学科や実技の評価試験への合格が必須です。更新のハードルが高いため、安定的な雇用には不向きな面があります。
転職の可否は労働者の自由度と企業側の対応力に直結
外国人材の離職や転職に備えて、制度ごとのルールを理解しておくことも重要です。
特定技能では同一分野内での転職が可能
特定技能の在留資格を持つ外国人は、同一業種であれば他社への転職が可能です。このため、求人や雇用の際には、職場環境や待遇に配慮しないと離職リスクが高まることもあります。
技能実習では原則として転職は不可
技能実習制度は研修的性格を持つため、転職という概念がなく、就業先の変更は「転籍」として、非常に厳格に制限されています。実習生の保護や制度維持の観点からも、自由な職場変更は認められていません。
受け入れ方法と人数制限の違いが採用計画に影響
採用活動の自由度や効率を左右するのが、受け入れ方法と人数制限です。
特定技能は直接雇用が可能で採用チャネルが広い
特定技能では、企業が直接求人募集を出すことができ、採用の自由度が高いのが特徴です。紹介会社を利用したり、海外での人材スカウトも可能です。
技能実習は監理団体を通じた限定的な受け入れ
技能実習制度では、送り出し機関と連携した監理団体を通じてしか実習生を受け入れることができません。また、監理団体による指導・監督が義務付けられており、採用に時間やコストがかかります。
人数制限にも大きな差がある
- 特定技能:原則人数制限なし(介護・建設分野など例外あり)
- 技能実習:企業規模に応じて人数上限あり(例:常勤30名以下の企業は最大3名)
多くの人材を雇用したい場合は、特定技能がより柔軟な選択肢となります。
家族帯同の可否が長期雇用の決め手になることも
外国人労働者が長期的に日本で働くかどうかは、家族と一緒に暮らせるかどうかが大きな要素になります。
特定技能2号なら家族帯同が可能
- 特定技能1号:家族帯同不可
- 特定技能2号:要件を満たせば、配偶者および子の帯同が認められる
家族とともに日本で生活できることで、長期的な雇用継続が期待できます。
技能実習では家族帯同が一切認められていない
制度の性質上、技能実習生は単身で来日し、実習終了後に帰国する前提のため、家族を帯同させることはできません。
雇用に適した在留資格を見極めるために重要な視点
求人活動の際に重要なのは、業務内容と在留資格の適合性です。希望する業務に対応していない在留資格での雇用は、不法就労助長罪に問われる可能性があります。
求人に合った在留資格の選定が必須
特に技能実習では業務範囲が非常に細かく定められており、日常的な補助業務でも範囲外であれば違反となります。一方、特定技能は幅広い単純業務にも対応しており、実務上の柔軟性があります。
まとめ
「特定技能」と「技能実習」は、制度の目的、就労範囲、在留期間、転職の可否、受け入れ方法、家族帯同の可否において、明確な違いがあります。
求人を行う企業は、まず自社の業務内容とニーズに合った在留資格を見極めることが重要です。違法雇用や離職リスクを回避し、外国人材と共に安定した雇用関係を築くには、制度への理解と正しい活用が不可欠です。
