2020年度における特定技能制度の動向を振り返ると、試験実施の拡大や制度運用の見直しが相次ぎ、外国人材の受け入れ環境整備が本格化した一年となりました。ベトナムやフィリピンでの試験実施開始、受け入れ企業の増加、各分野での雇用調整、新型コロナウイルスの影響を受けた制度対応など、多角的な進展が見られました。今後の特定技能人材の活用に向け、試験制度・受入体制・支援策の情報を正確に把握することが重要です。
特定技能試験の国際展開と対象分野の拡大
ベトナムやフィリピンで初の特定技能試験を実施
2020年度には、特定技能制度に基づく技能評価試験がベトナムとフィリピンで初めて実施されました。建設分野の「鉄筋施工」や「電気通信」分野などが対象となり、実務に直結する技能を評価する試験の国際展開が進展しました。これにより、即戦力人材の育成と採用がより現地主導で可能となり、雇用側の選択肢も広がっています。
海外試験職種を拡大へ
建設技能人材機構は、2021年度にかけてベトナムでの技能評価試験を10職種に拡大する計画を発表しました。製造業や農業、介護など多様な分野における人材確保を視野に、海外での試験展開が戦略的に進められています。
制度運用の見直しと書類提出義務の変更
製造業分野で申請書類に新たな要件
製造3分野(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)においては、特定技能外国人を受け入れる企業に対し、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入証明書の提出が2021年3月より義務化されました。申請手続の明確化と透明性の向上が目的とされています。
ベトナム国籍者の推薦者表提出が必須に
2021年2月から、ベトナム人特定技能申請者に対して「推薦者表」の提出が必須となる制度変更が行われました。これにより、推薦機関や関係団体との連携がより重視されるようになっています。
特定技能外国人の雇用促進と受入支援の強化
雇用支援体制の整備と情報発信強化
外国人雇用をめぐる自治体や関係省庁の取り組みも広がりを見せました。人材バンク事業や外国人受け入れ支援事業を通じて、介護分野を中心に求人と人材のマッチング支援が進行しています。また、外国人材向けの情報提供サイトや多言語対応の相談窓口の整備も進められ、雇用主と外国人労働者双方にとって利便性が向上しました。
表彰制度で外国人材の活躍を可視化
建設現場での活躍が認められた外国人技能者に対する表彰制度も実施され、制度を支える人材の社会的評価が高まっています。このような取り組みにより、外国人材の雇用定着と職場でのモチベーション維持が期待されます。
特定技能外国人の就労状況と統計情報
特定技能在留者は15,000人超に
2020年末時点で、特定技能資格により在留している外国人数は15,663人に達しました。国籍別ではベトナムが最多となっており、制度導入当初から一貫して高い割合を占めています。技能実習からの移行者が大多数を占める点も制度の実情を反映しています。
建設分野の受け入れ企業数が1,000社を突破
特定技能制度創設以降、建設分野における受け入れ企業数は1,000社を超え、受け入れ計画の認定件数も増加しています。特に即戦力が求められる現場では、特定技能人材の確保が安定した雇用維持に直結する要因となっています。
特定技能における日本語試験と教育支援
JFT-Basicの国内実施がスタート
2021年3月より、国際交流基金が実施する日本語基礎テスト(JFT-Basic)が日本国内でも開始されました。これにより、特定技能1号を目指す外国人にとって、日本語能力試験(JLPT)と並ぶ新たな選択肢が加わり、試験の受験機会が増えています。
介護分野では日本語試験の多言語化を実施
介護技能評価試験や介護日本語評価試験においても、言語選択の多様化が進み、日本語による受験が可能となるなど、外国人材にとって柔軟で受け入れやすい試験体制が整備されています。
新型コロナウイルス対応と制度運用の柔軟化
入国制限による対応措置と支援金制度
新型コロナウイルスの影響で、外国人の入国制限が続く中、在留資格認定証明書の有効期限延長や書類提出の簡素化といった緩和措置が実施されました。また、入国後の隔離費用等に対する助成制度も用意され、事業所に対する支援も行われています。
雇用調整と緊急補助金の導入
一部の自治体では、技能実習生や特定技能人材を受け入れている企業への緊急支援補助金制度を設け、雇用維持と就労継続を支援しました。これにより、求人減少や労働環境の不安定化に対するリスク分散が進められました。
今後の展望:制度の定着とさらなる制度改正に注目
特定技能制度は創設から2年を経て、各産業分野における即戦力人材の受け入れ基盤として定着しつつあります。一方で、試験制度の拡充や受け入れ体制の見直し、雇用支援策のさらなる充実が求められています。
特に、制度の透明性・公平性を担保しつつ、国内外の人材確保を推進するためには、継続的な制度改善と柔軟な運用が鍵となるでしょう。
