入管法改正の要点と特定技能・育成就労制度の変更点【2024年】

2024年の入管法改正では、従来の技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労」という在留資格が創設されました。あわせて、特定技能制度の運用が見直され、不法就労助長罪の厳罰化や永住許可制度の適正化など、外国人の雇用に関わる制度全般が大きく変わりました。これらの改正は、外国人材の適正な受け入れと人権保護、そして労働市場の安定に向けた重要な施策として位置づけられています。

入管法改正の背景と目的

日本の人手不足と外国人材受け入れ政策

日本は少子高齢化の進行により、深刻な人手不足に直面しています。これに対応するため、政府は外国人労働者の受け入れを制度的に整備し、特定技能制度の創設や技能実習制度の見直しを進めてきました。こうした流れの中で、入管法の継続的な改正が行われています。

2019年:特定技能制度の創設

特定技能とは

2019年4月の改正で創設された「特定技能」は、日本国内の人手不足が深刻な産業分野において、一定の技能や知識を持つ外国人を雇用することを可能にした在留資格です。対象業種は介護、外食、建設、宿泊、農業など12分野で、いわゆる「単純労働」とされる業務にも従事できます。

技能実習からの移行

これまでは技能実習生として最長5年で帰国する必要がありましたが、特定技能へ移行することで、引き続き日本国内での就労が可能となりました。

2021年:入管法改正案の取り下げ

難民認定制度に関する問題

2021年に提出された入管法改正案は、不法滞在者の強制送還や難民申請の制限を強化する内容が含まれていました。特に、難民申請が3回目以降となる場合でも強制送還が可能になる点が批判され、最終的には廃案となりました。

社会的な反発とその影響

入管施設での死亡事件なども背景にあり、人権保護の観点から制度見直しが求められました。

2023年:送還制度と難民対応の見直し

送還停止効の例外規定

難民認定申請中であっても、以下のケースでは強制送還が可能とされました:

  • 3回目以降の難民申請者
  • 実刑判決を受けた者
  • テロ関与が疑われる者

ただし、これらに該当しても「相当の理由がある資料」が提出された場合は、送還は停止されます。

自発的帰国の奨励制度

自ら出頭して帰国する場合、上陸拒否期間が5年から1年へと短縮される仕組みが整えられました。これにより、自発的な帰国を促進し、不法滞在の解消を狙っています。

2024年:育成就労制度の創設と関連改正

技能実習制度の廃止と育成就労制度

長年問題視されていた技能実習制度は、労働力確保よりも実習目的に偏り、制度的な不透明さや人権侵害のリスクが指摘されていました。これに代わり、2024年の改正では「育成就労」という新たな在留資格が創設されました。

育成就労制度は、人材育成と労働力の確保を明確に目的としており、制度上の透明性や労働者保護の強化が期待されています。

育成就労制度の特徴

  • 転籍の条件付き容認:技能実習では転籍が制限されていましたが、育成就労では条件付きで転籍が可能になり、失踪リスクの軽減が期待されています。
  • 実習からの切替:技能実習を経て育成就労へ移行することで、外国人材の継続的な雇用が可能になります。

特定技能制度の適正化

登録支援機関の義務化

特定技能1号の外国人労働者を受け入れる企業が支援業務を外部委託する場合、委託先を登録支援機関に限定することが義務付けられました。これにより、支援の質と透明性の確保が図られます。

不法就労助長罪の厳罰化

転籍ブローカー対策

転籍制度の緩和により、悪質な仲介業者が介入するリスクが指摘されています。これに対応するため、不法就労助長罪の罰則が強化されました。

  • 旧罰則:拘禁刑3年以下または罰金300万円以下
  • 新罰則:拘禁刑5年以下または罰金500万円以下(併科可)

永住許可制度の適正化

永住者への新たな基準

永住許可の取り消し対象として、以下の項目が明記されました:

  • 入管法上の義務違反(届出義務など)
  • 故意に税金や社会保険料を納付しない行為
  • 特定の刑罰法令違反

永住者は更新審査がないため、義務履行の確認が困難とされていました。今回の改正では、永住資格者にも一定の責任が課されることになります。

今後の課題と展望

制度運用の透明性と公平性の確保

特に難民認定や永住許可取消といった分野では、審査基準の明確化や情報公開の充実が課題です。外国人材の雇用にあたり、企業側にも法的知識と体制整備が求められます。

まとめ

2024年の入管法改正は、外国人の受け入れに関する制度全体を見直す大規模なものとなりました。特定技能の適正化、新制度「育成就労」の導入、不法就労対策、永住者の適正管理といった内容は、日本の雇用環境の国際化とともに、外国人材との共生社会を目指す重要な一歩です。

今後も制度の詳細や運用状況を注視し、実務対応や採用戦略に反映させることが重要です。