特定技能外国人の内定取り消しと雇用契約に関する正しい理解

日本企業における人手不足の深刻化に伴い、特定技能外国人の雇用が拡大しています。その一方で、「外国人だから内定取り消しが容易」といった誤解が企業側に根強く残っているのも事実です。しかし、外国人労働者も日本人と同様に労働法の保護を受ける対象であり、不当な内定取り消しは法的リスクを招きます。

本記事では、特定技能外国人に対する内定取り消しの法的な位置づけや、在留資格の影響、外国人雇用における実務的な留意点を詳細に解説します。

内定の法的性質と雇用契約の成立タイミングを正しく理解する

内定は法的に「始期付解約権留保付労働契約」とされている

内定とは、雇用主が求職者に対して採用の意思を示し、入社日などの雇用条件を合意した段階で成立する労働契約です。法律上では「始期付解約権留保付労働契約」と呼ばれ、入社日までは一定の条件のもとで契約解除が可能な状態とされます。

この契約形態においては、企業側が自由に内定を取り消せるわけではなく、「社会通念上相当」と認められる合理的な理由が必要とされています。

求人活動における内定通知は労働契約の一部となる

企業が求人を通じて求職者に内定通知を出した時点で、すでに法的な拘束力が生じています。採用計画や業務計画の変更を理由に内定を簡単に撤回することは、契約違反として訴訟リスクを生む原因になります。

内定取り消しが認められる正当な理由とは何か

内定者に起因するケースでは合理性が認められることもある

  • 卒業要件の未達:新卒採用において学歴が条件である場合、卒業できなかったことが理由で内定取り消しが認められる場合があります。
  • 健康状態の著しい悪化:就業が困難な疾病や事故による障害などは、契約の根本的前提が崩れるため、合理的理由となり得ます。
  • 重大な経歴詐称:資格や職歴、学歴などの虚偽申告が業務に重大な支障を与える場合、内定取り消しが認められることがあります。

雇用主都合による内定取り消しには厳格な要件がある

雇用主の経営事情による取り消しは、いわゆる「整理解雇の4要件」に照らして適法性が判断されます。

整理解雇の4要件とは

  1. 人員削減の必要性
    経営の継続が困難であることが具体的に証明されなければなりません。
  2. 解雇回避努力の実施
    部署異動や配置転換、希望退職などの手段を講じた履歴が求められます。
  3. 人選基準の合理性と公正性
    対象者の選定において、勤務成績や貢献度に基づいた客観性が必要です。
  4. 解雇手続の妥当性
    労働者との協議や説明を尽くし、十分な説明責任を果たしている必要があります。

外国人の内定取り消しに特有の注意点と在留資格の影響

在留資格が取得できない場合の内定取り消しは合理性が認められる

外国人が日本で就労するには、業務内容に応じた適切な在留資格(いわゆる就労ビザ)の取得が不可欠です。就労に必要な在留資格が取得できない場合、その外国人を雇用すること自体が「不法就労」となり、企業は「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。

したがって、在留資格の不許可を理由とする内定取り消しは、一定の合理性があると評価されることが一般的です。

停止条件付きの雇用契約でリスクを回避する

このようなリスクに備えるために、「在留資格の取得を停止条件とする雇用契約」を結ぶことが有効です。これにより、資格取得を前提として雇用契約の効力が発生するため、後の法的トラブルを回避できます。

求職者の出身国の制度が雇用手続きに影響する場合がある

一部の国では、国外就労に独自の手続きが求められる

国によっては、労働者の国外就労に対して政府の事前許可や登録が必要な場合があります。たとえば、特定国では国外雇用主が政府機関に登録しなければ雇用契約を結べない制度があり、これに違反すると雇用そのものが無効になるリスクがあります。

このような制度を理解せずに内定を出し、後に登録が認められずに雇用できなくなるケースでは、内定取り消しの合理性が認められる可能性はありますが、企業の過失が問われるリスクもあります。

外的要因による入国遅延と内定取り消しの対応

世界情勢により求職者の入国が困難となる事例に注意する

新型感染症の流行や政治的混乱などにより、外国人求職者が入国できないケースもあります。このような場合、すぐに内定を取り消すのではなく、以下の対応が求められます。

適切な対応のポイント

  • 入社意思の再確認を行う
  • 入社時期の調整や延期を検討する
  • 求職者に対して丁寧な説明とフォローを行う

入国困難が長期化し、就業の見通しが立たない場合でも、求職者との信頼関係に配慮した対応が必要です。

内定取り消しが企業にもたらす重大なリスク

法的責任や社会的評価の低下につながる可能性がある

1. 求職者からの損害賠償請求リスク

内定取り消しが不当であると判断されれば、損害賠償や慰謝料の請求を受ける可能性があります。また、労働審判や訴訟の対象となることもあります。

2. 企業の評判悪化による求人への影響

特に外国人労働者はSNSでの情報共有が活発であるため、評判の悪化が求人活動に大きく影響します。内定取り消しの事実が拡散されれば、今後の求職者からの信頼を損なうことになります。

3. 企業名の公表リスク

厚生労働省は、一定の条件(例:同一年度に10件以上の取り消し等)に該当する企業に対して企業名を公表する措置を取っています。これにより、求人活動がさらに困難になる可能性があります。

4. 将来的な外国人雇用への支障

内定取り消しが繰り返されると、入管当局からの信頼を失い、特定技能などの在留資格申請が厳しくなる可能性もあります。これは外国人労働者を活用する企業にとって大きな痛手となります。

まとめ

外国人材を含む特定技能人材の活用が進む一方で、雇用主にはより高度な法的知識と慎重な対応が求められます。内定取り消しは、労働者の生活に重大な影響を及ぼすものであり、軽々しく行うべきではありません。

在留資格の取得可否、出身国の制度、入国制限など、外国人雇用に特有のリスクを把握したうえで、契約書の整備や誠実な対応を通じて、求人と雇用のトラブルを未然に防ぐことが重要です。企業にとっても、信頼を失わずに持続可能な人材確保を行うために、適切な対応を徹底しましょう。