技能実習制度は長年にわたり外国人労働力を受け入れる枠組みとして利用されてきましたが、多くの問題が指摘され、制度自体の廃止が検討されています。本記事では、技能実習制度の概要、特定技能制度との違い、監理団体や送出機関の役割、雇用の際の注意点、そして今後の制度の方向性について解説します。採用担当者や経営者が外国人労働者の受け入れを検討する際に知っておくべき重要なポイントをまとめました。
技能実習制度とは何か?
技能移転を目的とした制度
技能実習制度は、1993年に創設され、開発途上国への技術移転を目的としたものであり、基本的には「労働力確保」を目的としていません。そのため、制度上は労働者ではなく「実習生」として受け入れる形式となっています。
在留期間の制限と実習区分
技能実習制度では最長5年間の在留が可能で、1年目は1号、2〜3年目が2号、4〜5年目が3号と区分され、それぞれの段階に進むためには試験への合格が必要です。3号に移行できるのは優良な一般監理団体に限られます。
技能実習制度の実態と課題
人数推移と背景
技能実習生の受け入れ人数は2015年以降急増し、ピーク時には約41万人が在留していました。その背景には人手不足の深刻化やインフラ整備需要の高まりがありますが、近年は新型コロナウイルスの影響で一時的に減少しました。
問題点:制度と現実の乖離
実際には労働力として活用されている一方で、制度上は「労働者」として扱われないため、転職の自由がなく、待遇面での問題や失踪といった課題が生じています。また、監理団体や送出機関の不適切な運用も問題視されています。
特定技能制度への移行とその意義
特定技能制度とは
特定技能制度は、労働力不足を補うために導入された制度で、特定技能1号では最長5年、2号では無期限での在留・就労が可能です。技能実習を良好に修了した外国人は、一定の条件下でこの制度へ移行できます。
主な違いと移行の利点
| 比較項目 | 技能実習 | 特定技能 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 最長5年 | 最長10年(2号) |
| 転職可否 | 不可 | 可能 |
| 制度の目的 | 技能移転 | 労働力確保 |
| 人数上限 | 制限なし | 分野ごとに上限あり(例:5年で34万人) |
特定技能制度は、実際の雇用実態に即した制度設計となっており、特定技能2号の対象分野拡大も進められています。
監理団体と送出機関の役割
監理団体とは?
監理団体は、技能実習生の保護と制度の適正運用を支援する非営利組織です。主な業務は以下の通りです。
- 技能実習計画の策定支援
- 企業への定期監査(3ヶ月に1回)
- 実習生の生活・労働環境の相談対応
信頼できる監理団体を選定することが、トラブル回避の鍵となります。
送出機関とは?
送出機関は、外国人技能実習生を海外で募集・教育し、日本へ送り出す役割を担います。制度上、違約金の徴収は禁止されていますが、一部の悪質な送出機関では問題が発生しているため、政府間での情報共有や認定制度により対応が進められています。
技能実習の対象業種と受け入れ方法
対象職種と分野
技能実習の対象職種は2022年時点で85職種158作業に及び、建設業、食品製造、介護などの人手不足分野が中心です。宿泊や介護など新しい分野も追加され、今後も拡大が見込まれます。
受け入れ方法の2形態
| 受け入れ形態 | 内容 |
|---|---|
| 企業単独型 | 海外支店などを通じて直接受け入れる方式 |
| 団体監理型 | 監理団体と送出機関を介して受け入れる方式 |
大多数の中小企業は、団体監理型を利用して技能実習生を受け入れています。
雇用にあたっての注意点
技能実習計画と各種法令の遵守
企業は実習計画の策定と認定を受ける必要があり、受け入れ可能な人数や労働条件も法律で細かく定められています。労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの遵守が必須です。
受け入れの具体的流れ(団体監理型)
- 監理団体に希望人数・職種を申込み
- 送出機関が候補者を選定し雇用契約を締結
- 技能実習計画の認定申請
- 在留資格の申請と発給
技能実習制度の課題と今後の方向性
実習生の失踪問題
SNSの普及により、実習生は賃金や待遇の比較を容易に行うようになり、期待とのギャップから失踪するケースが後を絶ちません。企業は、採用時に仕事の実情や待遇を丁寧に説明することが求められます。
制度の目的と実態のズレ
制度の理念と実態が乖離していることで、手続きが複雑化しています。今後は、特定技能制度への一本化や簡素化が進む可能性があります。
日本語能力の重要性
日本語力が不十分なまま就労すると、労災リスクの増加や意思疎通の問題につながります。企業や監理団体は、実習前後の日本語教育にも積極的に取り組むべきです。
まとめ
技能実習制度は、元来の目的と現実の乖離、監理団体や送出機関の課題、実習生の失踪といったさまざまな問題を抱えています。
今後は、特定技能制度への移行が加速し、より現実に即した外国人材の受け入れ体制が整えられていく見通しです。企業は、正しい知識を持って制度を活用し、適切な雇用環境を整えることが求められています。
