特定技能・就労ビザ外国人退職時の雇用主が行う対応と手続き

外国人が就労ビザや特定技能の在留資格で日本企業に雇用されていた場合、退職に際しては企業側にも一定の法的義務や手続きが生じます。本記事では、外国人が退職した後の3つのケース(転職、帰国、就労以外の活動)ごとに、企業が行うべき届出や雇用上の留意点を整理し、特定技能制度における支援義務やビザ取消リスクなど、実務的に役立つ情報を解説します。外国人労働者の適切な管理と求人対応の参考にしてください。

外国人が退職した際に企業がまず確認すべき基本対応

就労ビザ保持者の退職時に必要な法的手続きとは

外国人従業員が就労ビザや特定技能の在留資格で勤務していた企業を退職した場合、企業と本人双方に対して、出入国在留管理庁(以下「入管」)への届出義務があります。これを怠ると、将来の雇用やビザ更新に支障をきたすこともあります。

外国人本人が行う「所属機関等に関する届出」

外国人労働者は、退職日から14日以内に「所属機関等に関する届出」を入管へ提出する必要があります。提出方法は以下の3通りです。

  • 入管窓口での提出
  • 東京出入国在留管理局への郵送
  • 入管の電子申請システムを通じたオンライン提出

提出にあたっては、在留カード番号や退職企業の情報などを正確に記載する必要があり、罰則(最大20万円の過料)も規定されています。

企業が行う「中長期在留者の受入れに関する届出」の役割

企業は、外国人が退職した場合に「中長期在留者の受入れに関する届出」を提出する努力義務があります。こちらも退職日から14日以内が提出の目安です。この届出は以下のような情報を含みます。

  • 外国人の氏名、生年月日、国籍、在留カード番号
  • 雇用期間の終了日(退職日)

なお、「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出済みであれば、入管への同届出は不要とされています。

転職して日本で就労を継続する場合に企業が配慮すべき点

在留資格が現職と一致する場合の対応方法

外国人が退職後に別の企業へ転職し、従事する職務が現在の就労ビザの範囲内であれば、在留資格の変更は不要です。そのまま就労を続けることが可能であり、在留期間の更新時に転職先の企業情報を基に審査が行われます。

「技術・人文知識・国際業務」など汎用性の高い資格の場合

この在留資格では、職種によっては比較的柔軟な転職が可能です。企業は採用時にその業務内容が資格の適用範囲内であるかを慎重に確認する必要があります。

転職先の業務が既存の在留資格外である場合の対応

新しい職務が既存のビザで許可されていない場合、入管に「在留資格変更許可申請」を提出する必要があります。この変更申請には1〜2か月程度の審査期間があるため、雇用開始前の手続きが必須です。

事前確認には「就労資格証明書交付申請」が有効

企業としては、採用前に候補者が現在の在留資格で自社業務に従事できるかを確認するため、「就労資格証明書交付申請」の活用が有効です。これにより、入管が業務内容と在留資格の整合性を審査し、文書で証明してくれます。

特定技能ビザ保持者が退職した場合の企業の支援義務

特定技能制度における帰国支援の義務とは

「特定技能」外国人は、在留資格取得時に「支援計画書」が提出されており、その内容に基づいて企業が支援責任を負います。退職後の帰国支援として、以下の支援が義務付けられています。

  • 空港への送迎
  • 住居の解約補助
  • 公共料金等の清算支援
  • 母国語による退職手続きの説明

登録支援機関への委託が可能

企業が支援を自社で行うことが困難な場合は、外部の「登録支援機関」に業務を委託することができます。登録支援機関は、特定技能外国人の生活・雇用支援を専門とする組織で、監理団体とは異なります。

帰国する場合の退職手続きと注意点

在留カードの返納だけで済むケースとその例外

外国人が退職後に帰国する場合、在留資格の変更は不要で、空港で在留カードを返納するだけで問題ありません。ただし、出国準備が遅れ在留期限を超えそうな場合には、「短期滞在」ビザなどへの変更が必要です。

企業として帰国前に確認すべき事項

退職後の帰国支援にあたり、企業は以下の点について確認・助言を行うとトラブル回避につながります。

  • 税金や社会保険料の未納有無
  • 住居や水道光熱費の契約解除
  • 銀行口座の解約
  • 携帯電話など通信サービスの解約

就労以外の活動を希望する場合のビザ変更手続き

就労ビザから「留学」「日本人の配偶者等」ビザへ変更する場合

外国人が退職後に進学や結婚など、就労以外の活動を目的として日本に滞在する場合は、活動内容に合った在留資格への変更が必要です。変更しないまま就労を停止して日本に残留すると、ビザ取消の対象となる可能性があります。

長期間の無職状態がビザ取消の対象になるリスクについて

就労ビザの取消条件と企業が気を付けるべきポイント

就労ビザ保持者が3カ月以上無職状態にあると、在留資格の取消対象となります。企業が転職者を求人・雇用する場合は、前職の退職時期を確認し、速やかに雇用契約を締結することが推奨されます。

雇用開始前の状態に関するよくある誤解

「退職から3カ月過ぎたら不法滞在では?」という質問がありますが、ビザは取消されるまでは有効です。ただし、資格外活動許可なしにアルバイトのみで生活している場合は違法となります。

企業都合で退職した場合の例外措置と求人対応

会社都合解雇・雇止めの場合の滞在延長措置

企業の倒産や雇止めなど、会社都合による退職の場合には、就職活動を続けていれば引き続き在留が認められることがあります。また、場合によっては「特定活動」ビザに変更し、さらに6カ月の滞在とアルバイトが可能になることもあります。

書類の整備と記録の保管が重要

企業は、以下のような書類を一定期間保管しておくことで、元従業員の就職活動継続を証明する際に役立ちます。

  • 退職証明書・離職票
  • 就職面接の記録
  • ハローワークへの求職登録記録

退職した外国人をアルバイト雇用する際の注意点

アルバイトのみでの雇用は原則不可

就労ビザは、フルタイムの就労を前提に付与されるため、退職後にアルバイトのみで外国人を雇用することは原則としてできません。企業は、雇用前に就労内容と在留資格が一致しているかを必ず確認する必要があります。

外国人退職時に企業が行うべき対応のまとめ

  1. 入管への届出を期限内に行うこと
     本人・企業ともに14日以内の届出が求められます。提出漏れはビザ更新や将来の雇用に悪影響を及ぼします。
  2. 就労ビザの確認と適切な手続き対応
     転職・帰国・別の活動など、退職後の予定に応じたビザの変更が必要かどうかを正確に判断しましょう。
  3. 無職状態が長引くとビザが取消される可能性があることに注意
     在留資格の維持には継続的な就労が必要です。求人の際には、応募者の在留状況や退職からの期間を確認することが重要です。

企業が外国人労働者を円滑に雇用し、退職時にもトラブルを防ぐためには、これらの制度と手続きを正しく理解し、適切に対応することが不可欠です。