特定技能などの在留資格を持つ外国人を雇用する企業にとって、契約書の作成はトラブル防止と法的リスク回避のために不可欠です。特に言語の壁や文化の違いによる誤解を防ぐために、雇用契約書は母国語で作成し、業務内容や就労条件を明確に記載する必要があります。
本記事では、雇用契約書と労働条件通知書の違い、特定技能制度に対応した契約書の記載ポイント、就労制限や在留資格との整合性の確保、作成から交付までの実務手順までを詳しく解説します。
外国人労働者との雇用契約書が必要な背景とは
特定技能外国人と日本人労働者の違いを意識した契約が必要
外国人労働者、特に特定技能制度で来日する労働者は、日本語が十分でないケースが多く、契約内容を誤解する可能性があります。
加えて、契約文化が異なる背景を持つため、書面による明確な取り決めがなければ「言った・言わない」のトラブルが発生しやすくなります。求人や採用の段階で、雇用契約書の作成を前提にした説明が必要です。
特定技能外国人の雇用契約書が果たす3つの役割
就労の法的根拠を示す
雇用契約書は、単に雇用条件を示す文書ではなく、特定技能のような在留資格取得の際に必要な申請書類でもあります。業務内容が在留資格に合致していないと、審査が通らない可能性があるため、職務内容を正確に記載することが必須です。
双方の権利義務を明文化する
口頭での説明では記録が残らず、後々のトラブルのもとになります。雇用契約書を通じて、労働時間や賃金、休日、解雇条件など、労働者と雇用者それぞれの権利と義務を明確にすることで、不当な要求や誤解を防ぎます。
出入国在留管理庁への説明責任を果たす
特定技能外国人が在留資格を得る際、契約内容の理解が求められます。内容を本人が正確に説明できないと、不許可になる場合もあるため、母国語での書面交付や逐語的な内容説明が求められます。
雇用契約書と労働条件通知書の使い分け方
両者の法的性質と目的の違い
労働条件通知書は、労働基準法第15条で交付が義務付けられており、雇用者が労働条件を一方的に通知するものです。一方、雇用契約書は雇用者と労働者の合意の上で取り交わされる契約文書で、法的証拠能力が高いのが特徴です。
特定技能外国人には雇用契約書の交付が望ましい
在留資格の申請には、労働条件通知書の提出でも問題ありませんが、契約内容に同意した事実を示す雇用契約書のほうが審査上有利に働く場合があります。また、求人時の条件と実際の労働内容が一致していることを証明する意味でも有効です。
特定技能外国人向け雇用契約書の記載必須項目
基本的な労働条件の明記は大前提
雇用契約書には以下の情報を正確に記載する必要があります。
- 業務内容と就業場所
- 賃金、支払方法、締切日、支払日、昇給の有無
- 勤務時間、残業の有無、休憩時間、休日、休暇
- 雇用期間と契約更新の有無
- 解雇、自己都合退職、退職金の取り扱いなど
特定技能に対応した業務内容の書き方
特定技能の在留資格では、職種ごとに認められた業務範囲が定められています。たとえば単純労働が原則として禁止されている中で、業務の一部として清掃や軽作業が発生する場合、業務全体の文脈で正当性を説明できるように記載する必要があります。
在留資格取得を停止条件とした契約条項の活用
不法就労リスクを回避するための記述
雇用契約を「在留資格取得を停止条件とする」ことで、在留資格が下りなかった場合の契約効力を無効化できます。この条項がないと、資格が取得できなかった外国人に対して、雇用を前提とする義務だけが残ってしまい、不法就労助長となる可能性があります。
停止条件の記載例と説明方法
「本契約は、労働者が就労可能な在留資格を取得することを停止条件とし、当該条件が成就したときに効力を生じるものとする。」
このような記載は法的には有効ですが、外国人労働者に理解させるためには平易な言葉で補足説明する必要があります。「在留資格が取れなければ契約は成立しません」といった口頭での補足も重要です。
外国人労働者の就労時間制限と求人条件の整合性
留学生や資格外活動者の就労制限に注意
資格外活動許可を得た留学生は、週28時間以内の就労が原則です。特定技能以外の資格での就労を予定している場合、求人内容やシフトがこの制限内に収まっているか、契約書で明確にする必要があります。
特定技能外国人の労働時間設定のポイント
特定技能の場合はフルタイムでの就労が前提となるため、就業規則との整合性が重要です。また、業務時間が長時間に及ぶ場合、労働基準法を遵守しているか確認し、法定外労働についても明記しておきましょう。
母国語対応の契約書でトラブルを予防する方法
労働条件の誤解を防ぐには言語対応が不可欠
契約書の日本語版だけでは、外国人労働者が内容を正しく理解できないリスクがあります。誤解が原因で早期退職されたり、企業が帰国費用を負担しなければならなくなるケースもあります。母国語での契約書または労働条件通知書の作成が強く推奨されます。
厚生労働省の外国語対応雛形を活用する
厚生労働省では、以下の言語に対応した労働条件通知書のサンプルを公開しています。必要な部分を書き換えることで、簡単に母国語版の書面を用意できます。
- 英語
- 中国語
- ベトナム語
- インドネシア語
- ポルトガル語
- スペイン語
- 韓国語
- タガログ語
契約書作成から交付までの具体的な流れ
実務に沿った契約作成ステップ
- 労働条件通知書を先に作成し、記載項目を確認
- 雇用契約書として必要な要素を追加し、草案を作成
- 内容を母国語に翻訳(難しければ通知書のみでも可)
- 専門家(行政書士・社労士・弁護士)によるチェック
- 雇用者・外国人労働者双方が署名・押印し、各1通ずつ保管
外国人への説明と同意取得も忘れずに
契約書の内容を丁寧に説明し、労働者が納得して署名することが大切です。必要であれば通訳を介して行い、録音や署名時の記録を残しておくと安心です。
まとめ
特定技能を含む外国人労働者の雇用においては、雇用契約書の整備が重要なステップです。契約書はトラブル防止だけでなく、在留資格の取得や企業のコンプライアンス確保にも関わる重要な文書です。
求人段階から就労条件を正確に設定し、契約書には在留資格や労働時間制限への配慮、母国語対応といった外国人特有の事情を反映させることが求められます。企業と労働者の双方が安心して働ける環境を整えるためにも、実務に即した正確な契約書の作成を心がけましょう。
