台湾では、転職が前提のキャリア形成が一般的であり、求人市場や雇用制度も日本と大きく異なります。待遇や通勤、職場環境への不満が転職の主な理由で、採用コストや退職金制度など社会全体の仕組みが転職を後押ししています。
また、近年は日本での就職を希望する台湾人が増加しており、「特定技能」を活用した雇用ニーズも拡大しています。日本企業が台湾人材を受け入れるには、その背景と文化を理解することが不可欠です。
台湾では転職が前提のキャリア設計が一般的
台湾の雇用文化では、1社に長く勤めるという価値観は主流ではありません。新卒でも経験者と同じ土俵で求人に応募し、まずは職歴をつけるためにどこかに就職し、その後転職で条件の良い仕事へとステップアップしていくスタイルが一般的です。
新卒採用の概念が存在しない台湾の就職事情
日本における新卒一括採用制度は、台湾にはほとんど見られません。大学4年生になっても、卒業後に就職することが当たり前であり、焦って就職活動を行う風潮は薄いです。企業は学歴や職歴を重視し、「新卒枠」よりも即戦力を求める傾向が強くあります。
そのため、台湾の若者にとっては「とりあえず就職し、転職でキャリアアップする」という考え方が一般化しており、結果として初期の離職率が非常に高くなっています。
台湾では転職回数が多いことはキャリアの強みとされる
台湾社会では転職回数の多さがネガティブに捉えられることは少なく、むしろ積極的なキャリア形成の一環と考えられています。
転職はスキルアップと待遇改善のための手段
台湾の20代〜30代前半では、2年ごとの転職が珍しくなく、職歴の多さはさまざまな業務に携わった証とされ、評価される場合もあります。日本のように「転職=根気がない」と判断されることは少なく、むしろより良い条件を求める行動力として肯定的に見られます。
台湾人が転職を決断する主な理由とその背景
台湾人が転職する主な理由は、待遇の不満、勤務地の問題、職場環境の悪さです。これらは、台湾の求人市場における企業の雇用姿勢や働き方の価値観に密接に関係しています。
給与水準と昇給制度が転職の引き金に
台湾では、新卒の初任給が月3万元(約10万円)前後と低く、物価上昇を考慮すると生活水準は上がりにくい現状です。さらに、昇給制度が整っていない企業が多く、努力や勤続年数が収入に反映されにくいため、より好条件の求人へ転職する動機が生まれます。
通勤の負担を避けるため勤務地を重視
「給料が高く、仕事は少なく、家から近い」が理想とされる台湾では、勤務地の近さが重要視されます。平均通勤時間は約30分程度で、長時間通勤を嫌う傾向があります。日本のように引越しで対応するよりも、勤務地が遠ければ転職で解決しようと考える人が多いのです。
職場の人間関係や労働環境も大きな要因
職場の人間関係が悪い、上司との相性が合わない、残業が多いといった要素も転職理由の上位に挙がります。台湾では、プライベートの充実を優先する文化が根付いており、職場環境に我慢して働くという発想は少ないです。労働条件の悪化は即転職につながる傾向があります。
台湾社会が転職をしやすくしている構造的な背景
台湾では、社会的な制度や文化が転職のしやすさを後押ししています。求人情報へのアクセスのしやすさや、雇用制度の柔軟性なども転職文化に大きく影響しています。
シンプルな履歴書と短期間の選考プロセス
台湾では、日本のように企業ごとに履歴書や職務経歴書をカスタマイズすることは一般的ではありません。基本的に1枚の履歴書で多数の求人に応募し、面接も1回で済むことが多いため、転職活動にかかる時間と労力が少なく、在職中でも気軽に次の職を探すことが可能です。
定着率に影響しない退職金制度の仕組み
2007年以降、台湾では拠出型の退職金制度が導入されており、雇用主が毎月6%以上を退職金として積み立てます。この制度では転職しても過去の積立金が個人の専用口座に残るため、勤続年数に縛られる必要がなく、安心して転職を選択できる土壌があります。
採用コストの低さが企業の採用姿勢にも影響
台湾では求人サイトへの掲載費用が安く、年間10万円程度で無制限に掲載可能です。また、代替可能な人材であれば低コストで採用できることから、企業側も長期雇用にこだわらず、退職を前提とした柔軟な雇用管理を行う傾向があります。
特定技能を活用した日本就職に台湾人の関心が高まる理由
若年層の6割以上が海外就職を希望
台湾のビジネス誌による調査では、20〜35歳の若者のうち6割以上が海外での就職に興味を持っており、その中でも日本が最も人気の高い就職先となっています。これは、求人内容だけでなく、文化的な親近感や生活環境の魅力も要因とされています。
日本での雇用が人気な2つの理由
1つ目は、日本に対する親しみやすさです。台湾では日本文化や日本製品への関心が高く、旅行先としても人気です。働くこともその延長線上にあり、憧れを持っている人が多いのが特徴です。
2つ目は、地理的な近さです。日本は台湾から最もアクセスしやすい先進国であり、3時間以内の飛行時間で行き来できるため、心理的にも距離的にも負担が少ないです。
まとめ
台湾では転職が当たり前の働き方であり、求人市場や雇用制度も日本とは大きく異なります。企業側も短期雇用を前提とした柔軟な採用活動を行っており、労働者も待遇や環境に応じて積極的に職場を変える傾向があります。
このような背景を持つ台湾人材が「特定技能」などの在留資格を活用して日本での雇用を目指すケースが増えており、日本企業が採用する際には文化的・制度的な違いへの理解が不可欠です。多様な価値観を受け入れる柔軟性が、国際人材の活用において今後ますます求められていくでしょう。
