特定技能外国人を企業が雇用する際、在留資格の申請に先立って健康診断の実施と関連書類の提出が求められます。健康状態の確認は、安定した就労と職場の安全確保に欠かせない要素です。
本記事では、雇用時および雇用後の健康診断の内容、診断項目、費用相場、診断場所、必要書類、注意点まで、求人活動を行う企業が知っておくべきポイントを詳しく解説します。
特定技能外国人の雇用時に必要な健康診断の意義と目的
特定技能の在留資格を取得するためには、健康状態の確認が法律上求められています。これは、業務に支障なく従事できるかどうかを判断し、企業側と外国人労働者双方のリスクを最小限に抑えるための措置です。
企業が求人を行い、特定技能人材を受け入れる際には、健康診断の実施と書類作成をサポートする体制づくりが重要となります。
特定技能外国人の健康診断で必要な基本的な検査項目
雇入れ時に必要な11項目の健康チェックとは
雇用契約前後に実施する健康診断では、以下のような基本的かつ網羅的な検査項目が求められます。これらは、出入国在留管理庁が指定する「健康診断個人票」に基づき、すべて実施される必要があります。
- 既往歴・業務歴の調査
- 自覚・他覚症状の有無の確認
- 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
- 胸部X線検査
- 血圧測定
- 貧血検査(血色素量・赤血球数)
- 肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)
- 血中脂質検査(LDL・HDL・中性脂肪)
- 血糖検査(空腹時または随時血糖)
- 尿検査(糖・たんぱく)
- 心電図検査
このような検査を通じて、身体的に労働に支障がないかを総合的に評価することが可能になります。
雇用後も必要となる特定技能外国人への定期健康診断
年1回以上の定期健診で健康管理を継続する理由
特定技能外国人を常時雇用する企業は、1年以内ごとに1回の定期健康診断を実施する義務があります。これは、日本人労働者と同様に健康を保ちながら就労を継続できるようにするためです。
定期健診の項目は、基本的には雇入れ時と同一ですが、以下の点に違いがあります。
- 喀痰検査が追加される場合がある
- 一部の検査は年齢や医師の判断により省略可能
これにより、対象者の実態に即した効率的な健康管理が可能となります。
特定業務に従事する外国人には追加の健康診断が必要
暑熱環境や有害作業を含む業務では診断内容が変わる
求人活動の中で、特定技能外国人が以下のような業務に従事する予定がある場合は、「特定業務従事者の健康診断」の実施が必要です。
- 高温・低温環境下での作業
- 粉塵の多い場所での作業
- 振動工具の使用
- 騒音環境や坑内作業
- 深夜業務を含む就労
これらの業務では、健康への影響が大きいため、半年に1回の頻度で定期的な健康診断を行う必要があります。
特定技能外国人が有害業務に従事する場合の特殊健康診断とは
法律に基づく特殊健康診断の義務と種類
特定の化学物質や放射線、石綿などを扱う業務に外国人を従事させる場合には、労働安全衛生法に基づいた「特殊健康診断」の実施が義務付けられています。対象となる業務は以下の通りです。
- 高気圧・潜水業務
- 放射線業務
- 有機溶剤・鉛・石綿の取扱い
- 特定化学物質の使用業務
これらの診断は、該当する業務に配置する前後に必ず行う必要があります。また、業務から外れた後も雇用中であれば定期的な健診が求められる場合があります。
健康診断にかかる費用と企業の負担義務について
健康診断の費用相場と賃金支払いの考え方
特定技能外国人に対して実施する健康診断の費用は、おおむね1万円前後が相場です。これらの費用は、企業が全額を負担するのが原則とされています。
さらに、定期健康診断の受診に要した時間についても、厚生労働省は「労使間で協議した上で、賃金を支払うことが望ましい」と指針を出しています。求人情報にこの点を明示することで、応募者の安心感を高めることにもつながります。
健康診断を受ける医療機関の選び方と注意点
海外・国内での受診時に確認すべきポイント
健康診断は、必要な項目すべてに対応可能な医療機関で実施しなければなりません。日本国内の多くの病院や健診クリニックで対応可能ですが、事前の確認が重要です。
海外で診断を行う場合には、現地の医療機関が規定の検査に対応しているか、また診断書の言語や書式が申請基準を満たしているかも慎重に確認してください。
特定技能の健康診断に必要な書類とその提出方法
健康診断個人票と申告書の準備と翻訳のポイント
健康診断関連で提出が求められる主な書類は以下の2点です。
- 健康診断個人票
- 受診者の申告書
これらは、出入国在留管理庁の公式サイトからダウンロードでき、外国人が理解できる言語(母国語等)での作成が推奨されています。併せて、日本語訳の添付が必要です。
診断書のうち「医師の所見」や「備考」欄についても、日本語訳の記載が求められる場合があるため注意が必要です。
宗教や文化に配慮した健康診断の対応方法
外国人の価値観を尊重した診断体制の整備
特定技能外国人の受診に際しては、宗教や文化的背景を十分に理解した上で対応することが、トラブルの回避や信頼関係の構築に役立ちます。
例えば、イスラム教の女性の場合、異性の医療スタッフによる診察を避けたいといった要望があります。こうした背景に配慮して、同性スタッフを手配するなどの柔軟な対応が望まれます。また、西洋医学に対する不信感を持つ文化もあるため、丁寧な説明を心がけることが重要です。
健康診断結果の確認と在留資格申請における注意点
健康状態による申請不許可リスクと対応の流れ
特定技能の在留資格申請において、健康診断結果が不良であれば、許可されないリスクがあります。そのため、企業の担当者は必ず結果を確認し、必要があれば再検査や治療の手配を速やかに行う必要があります。
また、診断結果には有効期限があり、以下の基準に注意が必要です。
- 海外在住者:申請日の3ヶ月以内
- 日本在住者:申請日の1年以内
この期限を過ぎた診断結果は無効となるため、事前のスケジュール調整が不可欠です。
まとめ
特定技能外国人を雇用する企業にとって、健康診断は在留資格申請のための重要なプロセスです。雇入れ時だけでなく、定期的な健康管理や業務内容に応じた追加の健診を行うことで、職場全体の安全性と生産性を高めることにつながります。
必要な診断項目や書類、費用、文化的配慮までを理解し、確実な対応を行うことで、求人活動と雇用手続きをスムーズに進めることが可能となります。
