少子高齢化による人手不足を背景に導入された「特定技能」は、日本の労働市場における外国人雇用の選択肢として注目されています。特定技能制度では、12の特定産業分野に限定して一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れることが可能となっており、従来の技能実習制度と比較しても実務ニーズに即した制度設計となっています。
本記事では、特定技能の制度概要から、求人・雇用に関する実務対応、注意点までを詳しく解説します。
特定技能制度が創設された背景と日本の雇用課題
日本の労働市場は少子高齢化によって深刻な人手不足が進行しています。特に中小企業や地方の産業では、求人を出しても応募がない状況が常態化しており、国内の人材供給だけでは対応しきれない現実があります。
このような背景のもと、2019年に在留資格「特定技能」が創設され、外国人労働者の受け入れが新たに可能になりました。これは、従来の高度専門人材に限った受け入れ枠を超え、より実務的・現場レベルでの即戦力人材を迎え入れるための制度です。
在留資格「特定技能」の特徴と制度の概要
特定技能が対象とする12分野14業種とは
特定技能の対象は、労働力不足が顕著な12の特定産業分野に限定されています。これには、介護、ビルクリーニング、農業、建設、外食産業など、日本国内で人手確保が困難な現場が中心です。
これらの分野は法令により明確に定められており、受け入れ可能業種と人数の上限も政府によって策定されています。
特定技能1号と2号の違いは在留期間と家族帯同にあり
- 特定技能1号:最大5年間の在留が可能。家族の帯同は不可。
- 特定技能2号:更新制で在留が可能。家族帯同が認められ、将来的には永住の可能性もあります。
ただし、2号の対象は建設業と造船・舶用業の2業種に限られており、制度の拡大が今後の課題とされています。
特定技能制度と技能実習制度の違いを理解する
制度の目的と求人対象の違い
技能実習制度は国際貢献を目的としており、発展途上国への技術移転が主眼です。これに対し、特定技能制度は労働市場のニーズに基づいた外国人雇用を目的としており、求人を通じて即戦力を確保することに主眼があります。
スキームと受け入れ手続きの簡素化
技能実習では送り出し機関や監理団体が関与し複雑な手続きを要しますが、特定技能では受け入れ企業と外国人との間で直接雇用契約を結ぶことが基本となります。登録支援機関の利用は任意であり、より柔軟な対応が可能です。
特定技能外国人を雇用するための要件と試験制度
特定技能評価試験と日本語試験の概要
特定技能を取得するには、分野別の技能評価試験と日本語試験の合格が必要です。多くの業種で日本語能力試験(JLPT)のN4程度が求められており、基本的な会話や読み書きができるレベルが基準とされています。
技能実習修了による試験免除の仕組み
技能実習2号を良好に修了した場合、技能評価試験および日本語試験が免除される仕組みがあります。これは、すでに日本での就労経験を持ち、一定の技能と生活適応力があると判断されるためです。
外国人求人の進め方と特定技能人材の探し方
求人募集の方法と送り出し機関の選定ポイント
特定技能人材を雇用する際には、試験合格者や技能実習修了者に向けた求人情報の発信が重要です。インターネット上の求人媒体や海外の送り出し機関との連携が一般的なルートとなります。
送り出し機関を選ぶ際は、以下の点に注意が必要です。
- 対応可能な業種
- 過去の実績
- 日本語教育の有無
- サポート体制
面接・採用手続きの実務フロー
実際の採用時には、日本人と同様に面接や適性判断が求められます。現地面接が難しい場合はオンライン面談を活用するケースも増えており、雇用契約締結後に在留資格認定証明書の申請を行います。
特定技能外国人を受け入れる企業が行うべき実務対応
雇用契約と支援計画の作成が義務
企業は、外国人労働者と「特定技能雇用契約」を締結し、就業内容、労働時間、報酬、休暇などを明記しなければなりません。また、生活支援の内容を盛り込んだ「支援計画」も策定が必要です。
賃金設定と労働条件の確認が重要
外国人であることを理由に、賃金を低く設定することはできません。同等の経験を持つ日本人と同等以上の条件で雇用することが義務づけられています。特定技能1号は技能実習2号相当の技能を有しているとされ、待遇は技能実習よりも高く設定する必要があります。
登録支援機関の役割と活用方法
支援内容の委託が可能な登録支援機関とは
外国人の生活支援業務は企業が自ら行うことも可能ですが、業務負担が大きいため、多くの企業では登録支援機関に委託しています。
登録支援機関は以下の業務を担います。
- 空港送迎、住居探し
- 日本語学習支援
- 生活オリエンテーション
- 就労相談対応
法務省が管理する登録支援機関の一覧から、信頼できる機関を選ぶことが重要です。
雇用後に求められる法令遵守と行政手続き
社会保険・雇用保険の加入義務
受け入れ企業は、雇用した特定技能外国人についても日本人と同様に社会保険や雇用保険への加入手続きを行わなければなりません。未加入の場合は制度利用そのものが認められないこともあります。
届出義務と違反時のリスク
特定技能外国人の受け入れ状況、支援計画の実施状況などについては、出入国在留管理局へ定期的な届出が必要です。以下のようなケースでは届出義務があります。
- 契約変更・終了時
- 支援体制の変更
- 活動実績報告(定期届出)
違反や不適切な対応があった場合、将来的に外国人の受け入れが制限される可能性があるため注意が必要です。
まとめ
特定技能制度は、日本の労働市場における深刻な人手不足に対応するための現実的な解決策として整備されました。外国人材を受け入れる企業にとっては、求人・雇用活動を通じて適切な人材を見つけ、労務管理と生活支援を一体的に行う必要があります。
制度の理解と適切な運用によって、外国人材と企業の双方にとって持続可能な雇用関係を構築することが可能になります。法令遵守と支援体制の充実を前提に、特定技能制度の活用を積極的に検討することが求められています。
