特定技能1号に基づく外国人雇用は、制度開始から一定の時間が経過したものの、政府の受け入れ目標には大きく届いていません。2020年12月末時点の在留外国人数は15,663人にとどまり、特にベトナム出身者が多くを占めています。業種別では飲食料品製造業や農業への求人が集中しており、制度運用には改善の余地が残されている状況です。
特定技能1号制度の受け入れ目標と現状のギャップ
特定技能1号は、深刻な人手不足が続く14業種を対象に、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れる制度です。政府は制度初年度に約4万7,000人の受け入れを目指し、5年間では最大34万5,150人という目標を掲げました。
しかし、2020年12月末時点での在留外国人数は15,663人にとどまり、初年度の目標の約33%に過ぎない結果となっています。この進捗状況は、特定技能制度が十分に機能していない現実を示しています。
国別の特定技能1号在留外国人数で見える偏り
ベトナム人労働者の割合が全体の6割を占める構造
国別にみると、ベトナムからの在留外国人が9,412人と、全体の約60%を占める圧倒的な数となっています。次点の中国(1,575人)、インドネシア(1,514人)と比較してもその差は大きく、求人元が特定の国に依存している実態が明らかです。
この偏りは、送り出し機関の整備状況や日本語教育の普及度、両国間の制度連携の強さなどに起因すると考えられます。多国籍人材の受け入れが進まなければ、制度の安定的な運用は難しくなるでしょう。
特定技能1号の分野別雇用状況と求人ニーズの実態
飲食料品製造業や農業への集中が顕著
2020年12月時点で、最も多くの外国人材が従事しているのは飲食料品製造業で、全体の約37%にあたる5,764人が在留しています。これは、季節変動が激しく求人の確保が難しい現場で、即戦力としての外国人労働力が強く求められていることを表しています。
次いで農業分野には2,387人、建設業には1,319人が在留しており、いずれも慢性的な人手不足が課題となっている業種です。
他業種における雇用数の傾向
以下のような業種でも一定数の外国人材が特定技能1号として働いています。
- 産業機械製造業:1,248人
- 素形材産業:1,235人
- 外食業:998人
- 介護:939人
これらの分野では、実務に必要な技能水準と日本語能力をクリアする人材の確保が、求人活動の大きなハードルとなっています。
地域別に見る特定技能1号の外国人受け入れ状況
主要都市圏や工業地帯に集中
都道府県別にみると、受け入れ人数が多い地域は千葉県(1,260人)、愛知県(1,250人)、東京都(1,016人)といった都市圏および工業集積地に集中しています。これらの地域では、製造業を中心に求人が活発であり、特定技能人材の雇用ニーズが顕著です。
| 都道府県 | 在留外国人数(2020年12月) |
|---|---|
| 千葉県 | 1,260人 |
| 愛知県 | 1,250人 |
| 東京都 | 1,016人 |
| 茨城県 | 832人 |
| 埼玉県 | 783人 |
| 大阪府 | 779人 |
地方においても、農業や水産業といった分野で外国人材の必要性は高まっていますが、都市部との情報格差や受け入れ体制の違いが、雇用数の偏在に影響しています。
特定技能制度の課題と安定的な雇用促進のための対策
制度運用上の主な課題
現在の受け入れ状況が目標に達していない背景には、以下のような制度的・実務的課題が挙げられます。
- ビザ取得手続きの煩雑さ
- 試験制度や日本語要件のハードルの高さ
- 企業側の制度理解不足
- 新型コロナウイルス感染症による入国制限の影響
雇用環境の改善と今後の対応策
これらの課題に対処するには、以下のような施策が求められます。
- 行政による手続き簡素化と情報提供の強化
- 日本語教育の支援拡充
- 地方企業への制度周知と支援体制の整備
- 多様な国との協定締結による人材の分散化
求人を出す企業側にとっても、制度の仕組みや雇用上の留意点を正しく理解し、外国人材を長期的に受け入れる姿勢が求められます。
まとめ
2020年12月末時点の特定技能1号における在留外国人数は15,663人であり、当初の受け入れ目標と比較すると低水準にとどまっています。飲食料品製造業や農業など、特定の分野に求人が集中しており、国籍別にもベトナムに大きく偏る状況です。
制度の本格的な定着に向けては、受け入れ体制の整備とともに、企業と行政の連携による柔軟な雇用対応が今後の鍵となるでしょう。
