特定技能1号は派遣雇用できる?農業・漁業分野での求人戦略と制度解説

特定技能1号外国人の雇用形態には原則として正社員やフルタイム勤務が求められますが、農業や漁業分野に限っては派遣での雇用も認められています。本記事では、派遣と正社員雇用の違いやそれぞれのメリット、制度上の条件、派遣事業所として必要な要件など、求人・雇用に役立つ具体的な情報を詳しく解説します。

特定技能制度の基本と技能実習との違いを正確に理解する

特定技能1号と2号の制度概要

特定技能は、日本の深刻な人手不足を背景に2019年から導入された在留資格です。対象となるのは、介護や外食、農業、建設など16の分野で、特定技能1号と2号の2種類があります。

特定技能1号は、一定の技能水準と日本語能力試験の合格を条件に、最長5年間の就労が可能であり、原則転職も可能です。これに対し特定技能2号は、より専門的な技能を持つ外国人を対象としており、在留期間の更新や家族帯同も許可されています。

技能実習制度との本質的な違い

技能実習は「人材育成」「技能移転」が目的であるのに対し、特定技能は即戦力となる「労働力の確保」が主目的です。したがって、技能実習では転職不可であるのに対し、特定技能は職場変更が認められています。

また、従事できる業務範囲にも差があり、農業でいえば特定技能では耕種農業全般に対応できるのに対し、技能実習では一部の作業に限定されます。

特定技能1号の雇用形態は正社員が原則

フルタイム勤務が基本条件

特定技能1号の外国人は、週5日・30時間以上のフルタイム勤務が求められています。このため、原則として正社員またはそれに準じる雇用形態での雇用が必要です。

企業側は、安定した労働環境と待遇を提供する義務があり、労働条件通知書の作成や支援計画の実施など、制度上の要件を満たす必要があります。

特定技能1号でも派遣雇用が認められる農業・漁業分野の特例

派遣雇用が可能な背景と制度的根拠

特定技能制度では、農業および漁業分野に限って派遣での雇用が認められています。これは、これらの業種が季節や天候、地域によって大きく労働力の需要が変動するため、柔軟な雇用形態が求められる現場事情に対応するものです。

雇用側にとっての実務上のメリット

農業や漁業の現場では、繁忙期と閑散期の差が大きく、通年で正社員を抱えると人件費の無駄が生じがちです。派遣形態を活用することで、必要なときにだけ人材を確保でき、コストの最適化が図れます。

特定技能外国人の派遣雇用時に必要な制度対応

支援計画や協議会加入の義務は派遣元企業に

通常、特定技能外国人を雇用する事業者には、生活支援を含む「支援計画の実施」および業種ごとの「協議会への加入」が義務付けられます。しかし、派遣の場合はこれらの義務は派遣元の企業が担います。

派遣先の農業法人や漁業事業者は、直接的な支援義務はないものの、受け入れ体制の整備や労働環境の確保は求められます。

派遣先として認められるための事業所条件

法令遵守や労働者の安定雇用が必須

農業・漁業分野で特定技能外国人を派遣で受け入れるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 労働基準法・社会保険・税法など関連法令を遵守していること
  • 過去1年以内に、同種業務の労働者を不当に解雇していないこと
  • 外国人失踪などの重大なトラブルを起こしていないこと
  • 法令違反や重大な不正がないこと

これらは、受け入れ先としての信頼性を判断する基準となっており、雇用前の確認が不可欠です。

特定技能外国人を派遣で求人する場合の実務的メリット

人件費の柔軟なコントロールが可能

派遣形態であれば、繁忙期に限定して人材を確保できるため、通年雇用に比べて人件費の変動に対応しやすくなります。例えば、年間を通じて3人の技能実習生を雇用していた場合、特定技能1号を1名派遣で活用することで、実質的な人件費削減も期待できます。

通算5年の就労期間を有効活用

特定技能1号は在留期間が最長5年間ですが、派遣であってもその期間を断続的に働くことが可能です。繁忙期だけ来日・就業し、閑散期には帰国するサイクルが成立します。こうしたスタイルは、柔軟な働き方を求める外国人労働者にとっても魅力的です。

正社員雇用で得られる長期的な効果と安定性

教育コストの削減と業務の習熟

正社員として継続的に雇用することで、現場の作業内容に精通した人材を育成できます。特定技能は業務範囲に柔軟性があり、季節や作業内容に応じて複数の業務を担当してもらうことが可能です。

また、特定技能の取得には日常会話レベルの日本語能力が求められるため、円滑なコミュニケーションが期待でき、作業指示の効率化にもつながります。

特定技能「飲食料品製造業」の活用も検討価値あり

6次産業化に対応した別分野の活用戦略

農業法人が自社で加工品の製造・販売まで展開している場合には、特定技能「農業」ではなく「飲食料品製造業」として外国人を求人・雇用することも可能です。この在留資格では、食品加工や包装、衛生管理などの業務をカバーできるため、業態に応じて柔軟に制度を使い分けることができます。

まとめ

特定技能1号外国人の雇用形態には、正社員と派遣の選択肢があり、それぞれの業種や経営方針に合わせて最適な求人戦略を立てることが重要です。特に農業や漁業など季節性の高い業種では、派遣雇用の特例が活用でき、コストを抑えながら効果的に人手を確保することが可能です。

ただし、制度には各種要件や制限があるため、受け入れ事業者としての義務や手続きについて正しく理解する必要があります。求人や雇用の際には、派遣か正社員かという形式だけでなく、業務内容や人材の希望、長期的な事業計画も含めて総合的に判断することが望ましいでしょう。