外国人労働者を「特定技能」などの在留資格で雇用する際には、採用前から入社後まで、多岐にわたる手続きと書類が求められます。在留資格の確認、労働契約の締結、行政機関への各種届出など、適切に対応しなければ、企業側に罰則が科される可能性もあります。
本記事では、外国人求人の開始から入社後の手続きまでを段階的に整理し、漏れのない雇用管理を実現するための実務ポイントを詳しく解説します。
外国人雇用前に必ず確認すべき在留資格と就労範囲
在留カードの内容を確認して就労可否を判断する
外国人を求人・採用する際は、最初に在留カードの記載内容を確認し、対象者が日本国内で合法的に働けるかをチェックする必要があります。
在留カード表面の「就労制限の有無」欄を確認する
在留カードの「就労制限の有無」欄には、以下の4種類の記載があります。雇用可否に直結するため、内容の違いを正確に理解しましょう。
- 就労不可:原則として雇用はできませんが、裏面の資格外活動許可欄により例外あり。
- 在留資格に基づく就労活動のみ可:業務内容に制限があるため、在留資格と業務内容の一致を確認。
- 指定書により指定された就労活動のみ可:「特定活動」などが該当し、別途指定書の確認が必要。
- 就労制限なし:すべての職種・業務での就労が可能です。
在留カード裏面の「資格外活動許可欄」も確認する
表面で「就労不可」と記載されている場合でも、裏面の「資格外活動許可欄」に以下のような記載があると、制限付きでの就労が可能になります。
- 許可(原則週28時間以内)
- 資格外活動許可書に記載された範囲内での活動
ただし、フルタイム雇用(正社員など)を希望する場合は、在留資格の変更が必要です。
偽造在留カードの見分け方と企業のリスク対策
アプリやシステムでICチップの真偽を確認する方法
法務省が提供している「在留カード等読取アプリケーション」を使えば、在留カードに内蔵されたICチップを読み取り、改ざんや偽造の有無を判定できます。公式サイトから無料でダウンロード可能です。
WEBサイトでカード番号の有効性を確認する
「在留カード等執行情報照会」では、カード番号を入力して、その在留カードが有効かどうかをオンラインで確認できます。これも併用すると、雇用リスクの大幅な軽減が可能です。
外国人採用時に交わすべき雇用契約と書類の注意点
雇用契約書と労働条件通知書の違いと使い分け
外国人を雇用する際は、以下のいずれかを必ず作成しましょう。
- 雇用契約書:労使双方の合意を証明する書類。トラブル防止に有効。
- 労働条件通知書:法律上義務。雇用側からの一方的な条件通知。
雇用契約書は、求職者の母国語など理解しやすい言語で作成するのが望ましく、契約の効力発生条件として「在留資格の交付」などを明記すると安全です。
転職する外国人を雇用する場合の注意点と手続き
在留資格の活動範囲に合った職種であるかを確認する
転職者を採用する場合、その人が現在持つ在留資格で新しい業務が可能かどうかが最大の確認ポイントです。活動範囲外で働かせると、企業も不法就労助長罪に問われるリスクがあります。
就労資格証明書や在留資格変更申請の要否を判断する
- 同職種への転職:在留資格の変更は不要。ただし、「契約機関に関する届出」が必要。
- 異なる職種・特定技能の場合:就労資格証明書(任意)および在留資格変更許可申請が必要になります。
留学生を新卒採用して正社員として雇用する手順
在留資格「留学」から「就労」への変更申請が必要
留学生を卒業後に正社員として雇う場合は、就労可能な在留資格(例:技術・人文知識・国際業務や特定技能)への変更が必要です。
変更申請は入社予定日の1〜3ヶ月前から可能で、許可までには1〜2ヶ月程度かかります。手続きは本人が行いますが、企業側が書類の準備をサポートするのが一般的です。
海外現地から外国人を採用する際の雇用手続きと流れ
在留資格認定証明書の取得から入国までのフロー
海外にいる外国人を採用する場合のステップは以下の通りです。
- 企業が在留資格認定証明書を申請
- 証明書が発行されたら、海外の求職者に送付
- 求職者が日本大使館でビザを申請
- 許可後、日本へ入国し就労開始
この手続きは1〜3ヶ月程度かかり、認定証明書の有効期間(発行から3ヶ月)にも注意が必要です。
入社後に企業が行うべき届出・保険加入手続き
契約機関または活動機関に関する届出の義務
雇用後は、在留資格に応じた届出(契約機関/活動機関)を14日以内に出入国在留管理庁へ提出します。原則は本人提出ですが、企業も代行可能です。
雇用保険への加入と外国人雇用状況届出の義務
要件を満たす場合、雇用保険の手続きはハローワークで行います。必要書類は以下の通りです。
- 雇用契約書
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 賃金台帳、出勤簿、労働者名簿
雇用保険に加入しない場合も、「外国人雇用状況届出書」の提出は全事業主に義務づけられており、違反時は罰金対象になります。
健康保険・厚生年金の加入手続きも必要
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」は、雇用開始から5日以内に日本年金機構へ提出します。日本人従業員と同様の扱いとなります。
外国人を雇用する際に注意すべき実務ポイント
在留資格の範囲外業務を行わせない
業務内容が在留資格に合っていなければ不法就労となり、企業も罰せられることになります。業務内容に不安がある場合は、行政書士や出入国在留管理庁に相談するのが安全です。
同一労働同一賃金と最低賃金の順守が必須
外国人にも「同一労働同一賃金」制度と最低賃金法は適用されます。給与条件が日本人より低い場合、在留資格が認められないケースもあるため注意が必要です。
まとめ
外国人材を雇用するには、「求人開始時の在留資格確認」から「入社後の行政手続き」まで、多段階での対応が求められます。特に特定技能外国人の雇用では、在留資格の範囲や就労可能業務、届出義務などが複雑になりがちです。
採用計画の初期段階で、在留資格や就労内容を明確にし、必要な書類と手続きのスケジュールを逆算して管理することが重要です。違法な雇用や手続きの遅れを防ぎ、外国人と企業の双方が安心して雇用関係を築けるよう、制度への正しい理解と実行が求められます。
