技能実習制度の課題と「育成就労」新制度の全体像

外国人技能実習制度は、途上国への技術移転と国際貢献を目的に始まりましたが、現状では人手不足の補填手段として制度が運用されており、多くの問題が指摘されています。こうした背景から、より持続的で公平な雇用を目指し、新たな制度「育成就労」への移行が予定されています。

本記事では、技能実習制度の仕組みと課題を整理し、今後導入される育成就労制度の概要や特定技能との関連について解説します。

技能実習制度の目的と現状

技能実習制度の概要

技能実習制度は、外国人が日本で技能や知識を習得し、それを母国に持ち帰って活用することで、開発途上地域の経済発展に貢献することを目的に設けられた制度です。対象職種は建設、農業、食品製造、機械金属など幅広く、制度を通じて一定期間、日本国内の事業所で就労することが可能です。

在留期間は原則として1号から3号に分かれており、最大5年間の滞在が認められています。ただし、在留資格を更新・変更するには、各段階で定められた試験の合格が求められます。

受け入れ方式:企業単独型と団体監理型

受け入れ方法には、受け入れ企業が直接海外から人材を招く「企業単独型」と、監理団体を通じて実習生を受け入れる「団体監理型」があります。実際には、全体の9割以上が団体監理型による受け入れです。

監理団体が採用や管理業務の一部を担うことで、企業側の負担は軽減されますが、制度の中間管理が複雑化し、責任の所在が不明確になることもあります。

技能実習制度の主な問題点

制度の目的外利用と実質的な労働力確保

本来、技能の習得を目的とする制度ですが、実態としては人手不足を解消するための手段として利用されているケースが目立ちます。単純労働に従事させる例もあり、技術移転の本来の趣旨から外れていると指摘されています。

劣悪な労働環境と人権侵害

技能実習生は転職の自由が制限されており、劣悪な労働条件でも退職が難しいという構造があります。長時間労働や低賃金、ハラスメントなどの問題が報告されており、人権侵害に発展するケースもあります。

悪質な送出機関の存在

外国人を日本に送り出す役割を担う送出機関の中には、過剰な手数料を徴収したり、十分な教育を行わなかったりする悪質な例もあります。これにより、多くの技能実習生が借金を背負って来日し、不利な条件での就労を余儀なくされるケースが少なくありません。

特定技能制度との違い

技能実習制度と混同されがちなのが「特定技能制度」です。特定技能は、即戦力としての人材確保を目的とした制度で、人材不足が深刻な分野での就労が可能になります。特定技能には試験が必要ですが、技能実習2号を良好に修了すれば試験が免除されるなどの優遇措置があります。

対象分野も異なり、特定技能は介護、外食業、建設、自動車整備などが中心ですが、今後さらに拡大が見込まれています。

新制度「育成就労」の導入予定と特徴

制度改革の背景と目的

技能実習制度に関する数々の問題を受け、政府は新制度「育成就労」を創設する方針を示しました。主な目的は以下の3点です。

  • 外国人労働者の人権保護
  • 職業能力の着実な育成とキャリアアップ
  • 安全・安心で共生可能な社会の構築

育成就労制度の主な変更点

新制度では、一定の就労期間(1〜2年)を経れば、本人の希望による転職が認められるようになる見通しです。また、特定技能への移行もしやすくなることで、長期的な就労が可能になります。

技能実習制度のような送り出し機関主導ではなく、職業能力の育成と労働者としてのキャリア形成を重視する構造へと見直される予定です。

雇用側が留意すべき点

在留期間と制度の経過措置

現行制度では、最大5年間の在留が認められていますが、制度改正後は最大3年までとなる可能性があります。施行前後で異なるルールが適用されるため、最新情報に注意が必要です。

実習実施者の義務

受け入れ事業者は、技能実習計画の作成、帳簿類の整備、関係者の選任などの義務を負います。具体的には、「技能実習責任者」「指導員」「生活指導員」の配置が必須となります。

受け入れ人数の上限

事業所の規模に応じて技能実習生の受け入れ上限が定められており、たとえば常勤職員が30人以下の場合は最大3人までとされています。また、優良企業と認定されれば、上限の引き上げが可能です。

日本国内に在留する外国人は対象外

技能実習制度は、海外からの受け入れが前提となっており、日本国内に既に在留している外国人を技能実習生として採用することはできません。これに対し、特定技能はすでに国内にいる外国人にも適用可能な制度です。

今後の展望と対応のポイント

外国人雇用に関する制度は、今後さらに見直しが進むと考えられます。雇用側は、単に人手不足を補う目的で制度を活用するのではなく、外国人労働者の育成や働きやすい環境の整備を行い、持続可能な雇用体制を築くことが重要です。

また、技能実習から特定技能への移行ルートが整備されていくことで、外国人材の定着が進むことが期待されます。制度の趣旨や変更点を正しく理解し、適切な運用を行うことが求められます。