農業分野では深刻な人手不足が続いており、即戦力となる外国人材の確保が喫緊の課題です。特定技能制度を活用すれば、一定のスキルや日本語能力を有する外国人を農業現場で雇用することが可能となります。
本記事では、特定技能「農業」の制度概要、対象業務、在留資格の取得方法、受け入れ機関の要件、求人・雇用時の注意点、メリットなどを詳しく解説し、制度を適切に活用するための実践的な知識を提供します。
特定技能制度の導入背景と農業分野での位置づけ
農業分野では高齢化や過疎化の影響で労働力不足が慢性化しており、持続的な生産体制を維持するためには、新たな人材確保策が不可欠です。そうした背景から創設されたのが「特定技能制度」です。
この制度は、農業を含む12の分野で外国人の就労を可能とするもので、農業は導入当初から対象業種に指定されており、求人活動の新たな選択肢として注目されています。
特定技能1号と2号の違いと農業分野における適用
特定技能1号の特徴と要件
農業分野で広く活用されているのが「特定技能1号」です。この在留資格は、一定の技能と日本語能力を有することが前提となり、取得後は通算5年までの在留が認められます。家族の帯同はできませんが、即戦力となる外国人材をスムーズに雇用できる点が大きな特長です。
特定技能2号は農業分野に未対応
「特定技能2号」はより高度なスキルを持つ外国人が対象で、在留期間の上限がなく家族帯同も可能ですが、農業分野は現時点で対象外となっています。今後の制度改正により対象拡大が検討される可能性があります。
特定技能「農業」で従事できる具体的な業務内容
耕種農業と畜産農業の区分と仕事内容
農業分野の業務は、耕種農業と畜産農業に分類され、それぞれ以下のような業務が特定技能で認められています。
- 耕種農業:農作物の栽培管理、収穫、出荷、施肥、土壌づくりなど
- 畜産農業:家畜の飼養管理、給餌、衛生管理、畜産物の出荷作業など
いずれの場合も、主要業務に「栽培管理」または「飼養管理」が含まれていることが求められ、単なる補助作業ではなく一定の実務を担う即戦力として雇用できます。
付随業務への従事は主業務とのバランスに配慮
関連業務として、農産物の加工、運搬、販売などへの従事も認められていますが、これらが主たる業務とならないよう注意が必要です。求人票作成時にもこの点を明記することで、制度の適正利用が可能となります。
繁忙期に対応した派遣雇用も可能な特定技能「農業」
派遣による受け入れが認められる唯一の分野
特定技能「農業」は、派遣労働による雇用が可能な数少ない分野の一つです。繁忙期と農閑期の差が大きい農業現場では、期間限定での人材確保手段として派遣が有効です。
派遣受け入れに必要な条件とは
派遣で特定技能外国人を受け入れる事業者は、以下のような条件を満たす必要があります。
- 労働・社会保険関連法規の遵守
- 同種業務での過去1年以内の不当な離職歴がない
- 行方不明事案などの不適切な外国人雇用歴がない
- 欠格事由(法令違反歴など)に該当しない
雇用前に上記条件を精査することで、トラブルの防止に繋がります。
特定技能「農業」在留資格の取得方法と流れ
技能・日本語の試験に合格するルート
農業分野での特定技能1号取得には、以下の試験の合格が必要です。
- 農業技能測定試験(耕種・畜産に分かれる)
- 日本語試験(JLPT N4以上、またはJFT-Basic A2以上)
これらの試験は海外でも実施されており、外国人が現地で受験し合格することで、来日前に在留資格申請が可能になります。
技能実習2号修了者の優遇措置
農業やその他分野の技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能への移行において試験が免除される場合があります。既に技能実習で実績のある人材は、求人活動の中で優先的に対象とすることが有効です。
雇用主が満たすべき受け入れ要件と支援体制の整備
特定技能外国人の受け入れに必要な基準
外国人を受け入れる事業者には、以下のような要件が求められます。
- 日本人と同等以上の賃金条件での雇用契約
- 雇用契約に記載すべき項目の網羅
- 法令遵守体制の整備と継続的な適法運営
- 外国人への支援体制と支援計画の策定・実行
制度運用にあたっては、これらの条件を満たさないと雇用許可が下りないため、準備段階での確認が重要です。
支援計画の作成と義務の履行が必要
特定技能1号の外国人を受け入れる際には、生活支援・就労支援を含む「支援計画」の作成が義務付けられています。支援内容には、日本語学習の機会提供、生活ルールの説明、相談体制の整備などが含まれます。
特定技能「農業」の人材を雇用するメリットとは
求人活動の幅が広がり即戦力を確保できる
特定技能人材は、一定水準の技能と語学力を有しているため、求人活動で即戦力の確保がしやすくなります。特に技術的な説明や現場作業の理解が求められる農業では、大きな利点です。
雇用人数や業務範囲に柔軟性がある
従来の技能実習制度と比較して、特定技能では受け入れ人数の上限が設けられておらず、雇用主の裁量で必要な人員を確保できます。就労できる業務の幅も広いため、柔軟な人材配置が可能です。
長期的な雇用が見込める体制づくりができる
1号での雇用は通算5年まで可能で、繁忙期に合わせた断続的な雇用も可能です。将来的に2号が農業分野にも適用されれば、無期限での雇用や家族帯同も実現でき、安定した労働力の確保が期待されます。
農業特定技能協議会への加入と制度改正の動き
特定技能制度では、分野ごとの協議会への加入が義務化されています。農業分野においては「農業特定技能協議会」が該当し、構成員として制度運営に協力する責任があります。
2024年6月からは、在留資格申請前の事前加入が義務化されており、加入手続きの時期と方法に注意が必要です。制度改正のたびにガイドラインも更新されるため、最新情報の確認は欠かせません。
まとめ
特定技能「農業」は、人手不足が続く農業現場において即戦力となる外国人材を雇用できる制度として、非常に有効な手段です。取得には技能や語学力の証明が必要で、受け入れ機関にも一定の基準と支援義務が求められます。
制度を適切に活用すれば、求人活動の幅が広がるだけでなく、長期的な労働力の確保にもつながります。農業分野で外国人材の雇用を検討している事業者は、制度の正確な理解と準備を整えた上で導入を進めることが重要です。
