特定技能ビザは、深刻な人手不足を抱える産業分野で即戦力となる外国人材を雇用するために設けられた制度です。本記事では、特定技能の概要から在留資格の取得要件、受け入れ可能な業種、採用から申請までの具体的な手順、そして求人活動の注意点までを体系的に解説します。事業者が特定技能外国人材を円滑に受け入れるために必要な情報を網羅しています。
特定技能制度の概要と目的
特定技能制度は、慢性的な人材不足に直面している産業に対し、外国人労働者の活用を促進することを目的に2019年に創設された在留資格の一つです。この資格を持つ外国人は、一定の専門的知識や技術を有しており、即戦力として企業の現場に貢献できることが期待されています。
制度の導入により、従来は対応できなかった業務にも外国人労働者を配置できるようになり、企業の採用の選択肢が大きく広がりました。今後も、政府による受け入れ枠の拡大が予定されており、求人・雇用戦略の一環として重要な制度となっています。
在留資格とビザ(査証)の違いを理解することが申請の第一歩
ビザは「入国許可」、在留資格は「日本での活動許可」
多くの事業者が混同しやすいのが「ビザ(査証)」と「在留資格」の違いです。ビザは外国人が日本に入国する際の推薦状のようなもので、在外公館(大使館や総領事館)で発給されます。
一方で、在留資格は日本国内での活動内容に応じて付与される資格で、出入国在留管理庁(入管)が審査・許可を行います。雇用を前提とする場合は、まず在留資格の取得が必要です。
雇用側は制度の正確な理解が不可欠
特定技能の手続きでは、ビザと在留資格の役割が明確に分かれています。これを混同すると、書類不備や手続き遅延といったリスクが生じるため、制度の正確な理解が求められます。
特定技能の対象となる16分野と今後の拡大動向
現在の対象分野は12から16へ拡大中
現在、特定技能1号で受け入れが可能な分野は以下のとおりです。
- 介護
- ビルクリーニング
- 製造業(工業製品、電気機器など)
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空業
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
このうち、特定技能2号に該当するのは建設・造船分野など一部で、介護は対象外となっています。
さらに、以下の4分野が新たに追加されました。
- 自動車運送業(バス・タクシー・トラック運転)
- 鉄道業(駅員・運転士・整備士など)
- 林業(育林、伐採)
- 木材産業(加工・流通など)
これらの新分野でも今後、求人活動が活発になると予想され、雇用ニーズが一層高まっています。
新分野ではより高い日本語能力が求められる
特に自動車運送業や鉄道業では、安全管理や接客が重要なため、他分野より高い日本語能力が求められる可能性があります。求職者のスクリーニングにおいて、言語能力の確認は不可欠となるでしょう。
特定技能1号と2号の在留資格の違いを把握する
特定技能1号の特徴と制限
- 在留期間: 通算5年まで
- 帯同家族: 原則不可(例外的に変更許可が認められる場合もあり)
- 支援義務: 企業または登録支援機関による支援が義務
取得には、日本語能力試験(N4以上)および分野ごとの技能評価試験の合格が必要です。ただし、技能実習2号を良好に修了していれば、これらの試験が免除されることもあります。
特定技能2号は長期雇用や家族帯同が可能
- 在留期間: 制限なし(更新可)
- 帯同家族: 配偶者や子どもの帯同が可能
- 支援義務: 企業による支援は任意
より高度なスキルと実務経験が求められますが、長期雇用を視野に入れた人材戦略を立てる企業にとっては非常に有利な資格です。
特定技能外国人を雇用するための手続きとフロー
ステップ1:求人と採用活動の実施
ハローワーク、海外の送り出し機関、人材紹介会社などを通じて採用活動を行います。民間の人材会社を利用する場合は、厚生労働省の許可を受けた信頼できる業者を選ぶことが重要です。
特定技能制度を利用する上で、送り出し国ごとに異なる手続きが必要な場合があります。たとえば、特定の国では、政府認定の送り出し機関の利用が義務付けられています。
ステップ2:雇用契約の締結と支援計画の策定
雇用契約には、以下の内容を含める必要があります。
- 日本人と同等以上の待遇
- 所定労働時間の明記
- 一時帰国の規定
- 派遣先の明示(派遣の場合)
- 帰国旅費の取り扱い
- 健康・生活面の支援体制
特定技能1号の場合は、生活支援を含む支援計画の作成も義務です。これには、住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習支援、苦情相談対応などが含まれます。
ステップ3:在留資格の申請手続き
- 海外在住者の場合: 「在留資格認定証明書交付申請」を入管に提出後、ビザ発給
- 日本国内在住者の場合: 「在留資格変更許可申請」による変更手続き
申請は本人または取次資格を持つ行政書士や登録支援機関が代行可能です。書類の不備があると審査が遅れるため、正確な申請が求められます。
ステップ4:ハローワークへの雇用状況の届出
外国人労働者を雇い入れた場合、ハローワークに対し「外国人雇用状況届出」が義務付けられています。雇用保険に加入しているかどうかで提出期限が異なるため、早めの確認と対応が必要です。
登録支援機関の活用で支援業務を効率化する
登録支援機関の役割と活用メリット
特定技能1号では、外国人への支援が法律で義務化されています。これには生活支援から相談対応、行政手続きの同行まで多岐にわたります。
支援業務の一部またはすべては「登録支援機関」に委託可能で、委託した場合は所属機関としての基準を満たしたものとみなされます。初めての雇用では、制度や支援内容の煩雑さに戸惑うことも多く、外部委託は実務上の大きな助けになります。
まとめ
特定技能制度は、即戦力となる外国人材を特定産業分野で雇用できる仕組みであり、日本の労働市場の新たな柱となりつつあります。正しい制度理解と準備を進めることで、安定的かつ合法的に外国人を採用することが可能です。
在留資格とビザの違い、雇用契約や支援計画の要件、求人活動の進め方など、各ステップでの注意点を把握し、必要に応じて専門家や登録支援機関の活用も検討しましょう。特定技能を活用した人材戦略は、今後の企業成長に直結する大きな要素となります。
