特定技能制度のもとで外国人を雇用する企業は、3ヶ月に1度、入管局に定期報告を行う法的義務があります。この定期報告は、外国人の就労状況や支援内容を正確に届け出るもので、提出を怠った場合や虚偽の記載があった場合には罰則が科される可能性があります。
報告書類の内容は、支援を登録支援機関に委託しているか、自社で支援を実施しているかによって異なるため、各ケースに応じた準備が求められます。本記事では、定期報告の概要、提出期間と方法、必要書類、書類作成のポイント、違反時のリスクまでを体系的に解説します。
特定技能制度における定期報告の役割と背景
人材確保が難航する中、特定技能制度は即戦力となる外国人材を受け入れる手段として注目を集めています。求人活動が難航する業界にとって、外国人の受け入れは貴重な戦力補填策です。
しかし、外国人雇用には制度上の責任が伴い、特定技能外国人の雇用にあたっては、生活支援や職場適応に関する取り組みの進捗を入国管理局に対して定期的に報告する必要があります。
この定期報告制度は、制度の適正な運用を確保するための監視・確認手段として位置付けられています。報告の内容は雇用主の義務であり、形式的な提出ではなく実態に基づいた記録とすることが求められます。
登録支援機関に業務委託している企業の定期報告の内容
支援業務をすべて登録支援機関に委託している場合でも、雇用主には報告義務が残ります。提出すべき書類の種類と記載すべき内容には、定められた形式と具体的な情報が求められます。
提出が必要な主な書類とその内容
- 受入れ・活動状況に係る届出書
法人番号、特定技能分野、雇用する外国人の基本情報と活動状況を記載し、雇用条件や業務内容に変化がないかを報告します。 - 賃金台帳の写し
雇用する全ての特定技能外国人について、対象期間中の賃金台帳を提出する必要があります。記載内容には誤りがないよう厳重な確認が必要です。 - 報酬支払証明書
給与が通貨払いである場合に必要で、該当する外国人ごとに作成・添付します。 - 報告項目の例
活動場所・業務内容・派遣先情報の変更有無、活動日数、報酬額、比較対象とした日本人従業員の情報など。
報酬の取り扱いにおける注意点
報酬に関しては、日本人従業員との均等・公正な取り扱いが求められています。職務内容や勤務条件が同等であれば、特定技能外国人と日本人との間で不合理な給与差をつけてはなりません。これは求人募集時点での提示条件にも反映させる必要があります。
自社で支援を行う場合に求められる追加報告と実務ポイント
特定技能外国人への支援業務を自社で行う場合は、支援の実施状況に関する報告が求められます。支援内容の実施・未実施についての記録を正確に作成し、提出することが必要です。
自社支援時に必要となる追加書類
- 支援実施状況に係る届出書
実施した支援の種類とその詳細、対象者ごとの対応状況を記載します。 - 1号特定技能外国人支援対象者名簿
雇用している外国人の氏名、性別、国籍、在留カード番号などを記載し、全対象者を網羅する必要があります。 - 定期面談報告書(外国人用・監督者用)
雇用主または監督責任者と外国人本人が3ヶ月ごとに実施する面談内容を記録し、面談結果を提出します。 - 相談記録書
労働条件や生活環境に関する相談・苦情があった場合には、その対応経過と結論までを記載した記録書を提出します。 - 支援未実施に係る理由書
支援計画書に記載された支援項目が実施できなかった場合には、その理由を明記した理由書が必要です。 - 転職支援実施報告書
やむを得ない理由による離職が発生し、転職支援を行った場合に提出します。
特定技能定期報告の提出スケジュールと方法
定期報告の提出は、四半期ごとの締め切りが明確に定められており、提出遅れは法令違反となります。
提出時期のルールと具体的期限
| 対象四半期 | 報告対象期間 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 第1四半期 | 1月1日~3月31日 | 4月14日まで |
| 第2四半期 | 4月1日~6月30日 | 7月14日まで |
| 第3四半期 | 7月1日~9月30日 | 10月14日まで |
| 第4四半期 | 10月1日~12月31日 | 翌年1月14日まで |
提出方法ごとの特徴と留意点
- インターネット提出
出入国在留管理庁の電子届出ポータルサイトからの提出が可能ですが、事前に利用申請とID取得が必要です。 - 窓口提出
管轄する地方入管局に書類を持参する方法です。法人の場合は登記上の本店所在地を基準とするため、管轄の確認が重要です。 - 郵送提出
書類の郵送も認められていますが、提出期限の消印ではなく、到着日が基準となるため余裕を持った投函が求められます。
書類作成時に注意すべきポイントと不備を防ぐコツ
特定技能定期報告の書類は、形式に加えて記載内容の正確性が非常に重要です。不備があると、受理されず再提出となることもあります。
実務担当者が押さえるべきチェックポイント
- 役職者の署名が必要な書類に注意
受入れ・活動状況に係る届出書などは、必ず企業側の責任者が記名・押印または署名する必要があります。 - 提出対象期間の見落としを防ぐ
短期在留や離職があっても、その四半期中に在留していた期間があれば報告は必要です。除外することはできません。 - 複数人の管理体制を整備する
支援、雇用管理、報告業務を分担し、各部門が情報共有する体制づくりが有効です。
定期報告の怠慢や虚偽記載に対する罰則のリスク
特定技能定期報告を怠ることや、虚偽の記載を行うことは法令違反に該当し、厳しい罰則が科される可能性があります。
想定される主な法的リスク
- 30万円以下の罰金
届出の未提出や内容虚偽が発覚した場合、雇用主には罰金が科される場合があります。 - 外国人の受け入れ停止措置
違反が重大と判断されると、今後の特定技能外国人の新規受け入れが停止されるなど、企業の求人戦略にも大きな影響が及びます。
まとめ
深刻な労働力不足が続く中、特定技能制度は即戦力となる外国人材の活用を後押しする制度として、企業にとって貴重な雇用手段となっています。しかし、特定技能外国人を受け入れる企業には、求人や雇用の管理に加え、支援実施とその報告という法的義務があります。
特定技能定期報告は、制度の信頼性と透明性を支える柱であり、正確かつ期限内の提出を怠ると罰則の対象となるため、事前の準備と継続的な管理体制が不可欠です。制度を安定的に活用するためには、報告書類の作成・提出を単なる事務作業ではなく、重要な企業責任として捉える意識が求められます。
