2020年9月末時点における特定技能1号の在留外国人数は8,769人で、政府が掲げた初年度の受け入れ目標(4万7000人)のわずか約12%にとどまりました。分野別では飲食料品製造業が最も多く、国別ではベトナム出身者が圧倒的多数を占めています。
制度開始から1年半が経過したものの、求人や雇用の現場での制度活用は進んでおらず、制度の運用面に多くの課題が残されていることが明らかになっています。
特定技能1号制度の現状と課題
初年度の受け入れ人数と現実のギャップ
特定技能制度は、日本国内の深刻な人手不足に対応するため、2019年4月に創設された在留資格です。政府は5年間で最大34万5150人を受け入れる計画を立て、そのうち初年度には4万7000人の受け入れを目標としていました。
しかし、2020年9月末時点で在留している特定技能1号外国人は8,769人にとどまっており、制度利用は想定を大きく下回る水準にあります。この状況は、制度設計と現場の実情との間に大きな乖離があることを示しています。
雇用現場での制度活用が進まない理由
制度の活用が進まない背景には、以下のような複数の要因があります。
- 試験実施の遅れや開催地域の偏りにより、必要な技能・日本語能力の証明が困難
- 新型コロナウイルスの影響で出入国制限が実施され、外国人材の流動性が低下
- 受け入れ企業の制度理解やサポート体制が未整備で、求人掲載すら難しい状況も存在
これらの要因が重なり、雇用主・外国人労働者ともに制度を活用しづらい環境が続いています。
国別に見る特定技能1号の在留外国人数の構成
ベトナムが全体の過半数を占める実態
特定技能1号として在留している外国人のうち、ベトナム出身者が5,341人と全体の約60%を占めています。続くのは中国(826人)、インドネシア(775人)、フィリピン(567人)など、技能実習制度での受け入れ実績が多い国が中心です。
技能実習からの移行がしやすい国が上位に
特定技能1号の多くは、技能実習からの移行者が占めており、実習制度が浸透していた国からの移行が進んでいます。この傾向は、今後の制度運用を考えるうえでも重要なポイントであり、各国の人材育成状況に応じた支援が必要です。
分野別で見る求人需要と受け入れ実績
飲食料品製造業が最も多くの外国人を受け入れ
2020年9月末時点で、分野別に見ると「飲食料品製造業」が最多の3,167人で、全体の36%を占めています。続いて「農業」(1,306人)、「外食業」(859人)、「産業機械製造業」(774人)と続きます。
分野別の求人・雇用ニーズの特徴
- 飲食料品製造業:製造ラインでの労働力需要が高く、求人件数も多いため、雇用が進みやすい
- 農業:季節労働的な性質から常時求人が発生し、地方での需要も高い
- 外食業:サービス業としての対人スキルが求められる一方で、慢性的な人手不足が課題
- 介護分野:日本語能力や専門知識が求められ、雇用までのハードルが高い
これらの分野では、求人ニーズが高い一方で、制度上の条件や支援体制が整っていないことから、雇用に至るまでに時間がかかるケースも多くあります。
地域別で見る特定技能労働者の分布状況
都市部と製造業が盛んな地域に集中傾向
地域別に見ると、受け入れ人数が多いのは千葉県(784人)、愛知県(718人)、東京都(686人)など、都市圏または製造業が盛んな地域が中心となっています。求人件数の多さや企業数の多さが、外国人雇用を後押ししている要因と考えられます。
地方との雇用格差の広がり
一方で、地方では特定技能外国人の受け入れが進んでいない地域も多く、雇用の地域間格差が課題となっています。地方の中小企業が制度を活用しやすくするためには、制度説明の強化やマッチング支援が不可欠です。
今後の展望と制度改善の必要性
特定技能制度は、日本の労働市場における慢性的な人材不足を補う重要な手段ですが、導入から1年半が経過しても活用は進んでいません。今後の制度改善に向けては、以下の取り組みが求められます。
制度運用の具体的な改善策
- 試験制度の拡充と開催地域の均等化
- 受け入れ企業への情報提供と支援体制の強化
- 求人情報の明確化と外国人とのマッチング支援の充実
- 地方での説明会やセミナー開催による制度浸透の促進
とくに中小企業や地方自治体にとって、制度の正しい理解と活用が、将来的な人材確保に直結します。これからは国・自治体・支援団体が連携し、制度の利用環境を整えることが重要です。
まとめ
2020年9月時点における特定技能1号の在留外国人数は目標を大きく下回り、求人や雇用の現場では制度の活用が思うように進んでいません。
分野や地域によって受け入れの進捗には大きな差があり、特に制度導入初期の課題が表面化しています。今後、より実効性のある制度運用と現場のニーズに合った改善が求められる中、特定技能制度の適正な発展が日本の労働力確保に向けた鍵となるでしょう。
