特定技能「自動車運送業」の雇用要件と受入れ手続き完全ガイド

日本の自動車運送業界では慢性的な人手不足が深刻化しており、2024年3月から新たに特定技能の対象分野に加えられました。本記事では、トラック・タクシー・バス運転手として外国人を特定技能で受け入れるために必要な求人や雇用条件、申請要件、必要な免許や試験情報などを体系的に解説します。外国人採用を検討する企業が知っておくべき制度のポイントを網羅的に紹介します。

特定技能「自動車運送業」分野の概要

自動車運送業の人手不足と制度の背景

自動車運送業界では、長時間労働やドライバーの高齢化が進行し、慢性的な人材不足が続いています。特にトラック、タクシー、バスの運送業種において深刻で、5年後には約28万8,000人の人手が不足すると予測されています。この課題に対応するため、政府は2024年3月、特定技能の対象分野に「自動車運送業」を追加しました。

受け入れ可能な業種と業務内容

対象業種は以下の3つです。

  • トラック運送業:運行管理、荷役作業、安全点検など
  • タクシー運送業:乗客対応、接遇、安全運行の記録作成
  • バス運送業:旅客運送、接客対応、定期点検や記録業務

日本人が通常行う付随業務であれば、外国人も従事できます。

雇用条件と必要な免許

雇用形態の要件

特定技能での雇用は、直接雇用かつフルタイムに限られます。派遣は認められていません。

運転免許の要件

業種ごとに必要な運転免許が異なります。

  • トラック運送業:第一種運転免許
  • タクシー・バス運送業:第二種運転免許

運転免許の取得には年齢や運転歴の要件がありますが、受験資格特例教習を受講することで、19歳以上・普通免許1年以上の条件で受験が可能となる制度も整備されています。

特定技能1号評価試験と日本語能力

業種別の技能試験

外国人が特定技能「自動車運送業」として働くには、以下の技能評価試験に合格する必要があります。

  • トラック:運行・荷役に関する知識と技術
  • タクシー・バス:運行・接遇に関する知識と技術

試験は日本国内外で実施され、出張方式とCBT方式の2種類があります。

日本語能力試験の要件

職種に応じて、以下の日本語能力が求められます。

  • トラック:JLPT N4 または JFT-Basic(200点以上)
  • タクシー・バス:JLPT N3以上

技能実習2号を良好に修了している場合、日本語試験が免除されることがあります。

外国人の免許取得支援と制度

外免切替と日本国内での取得

運転免許の取得方法は2つあります。

  1. 日本国内の教習所で免許を取得
  2. 海外の免許を日本の免許に切り替える(外免切替)

外免切替では知識確認・技能確認が必要ですが、一部国籍ではこれが免除されます。免許の学科試験は2024年6月以降、20言語で対応が可能となっています。

在留資格「特定活動」による入国

免許を持っていない外国人が日本で取得する場合、特定活動ビザにより一時的な入国と免許取得が可能です。

  • トラック分野:最長6か月
  • タクシー・バス分野:最長1年

この期間中に免許取得や研修を終える必要があります。

受入れ企業に求められる要件

基本要件

外国人を受け入れるためには、企業側にも以下の要件があります。

  • 道路運送事業者であること(道路運送法に基づく)
  • 職場環境良好度認証制度(またはGマーク)を取得していること
  • 自動車運送業分野特定技能協議会への加入
  • 新任運転者研修や初任運転者研修の実施

これらは、労務管理や安全管理の徹底を求めるための条件です。

採用までの流れと留意点

採用フローの全体像

  1. 採用検討の開始
  2. 人材紹介会社や登録支援機関との連携
  3. 求人の作成・募集・選考
  4. 運転免許の取得(必要に応じて)
  5. 協議会への加入
  6. 特定技能1号の在留資格を申請
  7. 入社・雇用開始

運転免許の取得が必要な場合、採用決定から就労開始までに6か月以上かかるケースもあります。

注意点

  • 外国人が日本の運転文化に慣れるには時間が必要
  • 交通ルール、標識、安全運転の研修を継続的に実施する必要あり
  • 最初は短距離配送や簡易業務から始めるステップアップが有効

特定技能外国人に対する支援

特定技能で外国人を雇用する企業には、生活支援の義務があります。

  • 生活・職業ガイダンス
  • 出入国の送迎、住宅確保支援
  • 行政手続きへの同行
  • 日本語学習支援
  • 定期的な面談や相談体制の整備

支援は母国語で行う必要があり、登録支援機関に委託することも可能です。

まとめ

特定技能「自動車運送業」分野の追加により、外国人材を活用した人手不足対策が現実のものとなりました。しかし、採用には運転免許の取得や企業の体制整備、継続的な支援が不可欠です。制度を理解し、計画的に受け入れを進めることで、安全かつ円滑な雇用が実現できます。

外国人雇用を検討する企業は、専門機関の支援を受けながら、早めの準備を進めることが重要です。