在留資格「研修」と在留資格「技能実習」はどんな違いがある?

「研修」と「技能実習」の在留資格上の区分

講義形式のみを在留資格「研修」とし、実務研修を伴う実習を在留資格「技能実習」としています。

在留資格「研修」や在留資格「技能実習」とは、職業上必要な知識や技能を高めるための教育で、方法はいろいろあります。入管法上、在留資格として研修や実習の内容の違いで、在留資格「研修」・在留資格「技能実習」の2つに区分、講義形式のみを在留資格「研修」とし、実務研修を伴う実習を在留資格「技能実習」としています。

在留資格「技能実習」は修得と習熟に段階を区分していて、技能実習の「修得」段階を在留資格「技能実習1号」、「習熟」段階を在留資格「技能実習2号」としている。在留資格「研修」の在留資格は実務研修を伴う実習形式はとらないため「習熟」段階は設定されていません。

企業単独型と団体監理型

技能実習在留資格は、実施機関や監理方法の違いで企業単独型と団体監理型に分かれています。

企業単独型は外国にある事業所または事業で関係する職員などの在留資格「技能実習(イ)」で、団体監理型は営利を目的としない団体の責任及び監理下による「技能実習(ロ)」となります。

「研修」「技能実習」に係る機関等の名称

在留資格「研修」・在留資格「技能実習」では、研修を実施する受け入れ機関や、技能実習を実施する実習実施機関、研修生や技能実習生を派遣する送り出し機関などが関係しています。

研修技能実習(企業単独型)技能実習(団体監理型)
受け入れ機関研修を実施する企業など海外進出した企業など
監理団体あっせん団体
実習実施機関技能実習生の勤務先技能実習生の勤務先
あっせん機関受け入れ機関以外監理団体以外
送り出し機関研修生の所属機関など技能実習生の所属機関など技能実習生を派遣する機関

上陸審査の要件

日本に上陸する外国人は、空港等で入国審査官の上陸審査を受けますが、上陸審査は、日本及び国民の利益のため必要不可欠です。入管法第7条で条件を定めています。

  • 有効なパスポートとビザ(査証)を所持していること
  • 申請に係る日本で行おうとする活動が虚偽でないこと
  • 日本で行おうとする活動が入管法に定める在留資格のいずれかに該当していること
  • 上陸基準のある在留資格についてはその基準に適合するもの
  • 滞在予定期間が在留期間を定めた施行規則の規定に適合すること
  • 入管法第5条に定める「上陸拒否事由」に該当しないこと

在留資格該当性

外国人の日本での活動や身分・地位は、これらいずれかの在留資格に該当していなければなりません。これが在留資格該当性です。

上陸の要件「入管法に定める在留資格」は、外国人が日本国で行う活動や日本人の配偶者のように身分・地位のある者としての活動を在留資格として分類したもので、在留資格ごとの活動や身分・地位の内容が規定されています。

入管法施行規則

施行規則とは、法令を施行するために必要な細則、法律または政令の委任に基づく事項を定めた規則・命令の総称です。

出入国管理及び難民認定法施行規則(入管法施行規則)は、入管法に基づき入国・在留許可申請の手続、提出資料、申請様式、申請代理人の範囲などを具体的に規定、各在留資格の在留期間を規定しています。入管法施行規則で在留資格「研修」・在留資格「技能実習」の上陸審査、在留資格変更等の提出資料やその他参考となるべき資料が規定されています。外国人が日本に在留することのできる在留期間は、各在留資格について入管法施行規則により定められています。

在留期間は5年(外交及び永住者の在留資格を除く)を超えることができず、在留資格「研修」及び「技能実習」 の在留期間も規定されています。

上陸基準省令

在留資格「研修」「技能実習」の法令等は、他の就労可能な在留資格と比較した場合、多岐にわたり定められています。

外国人が日本に上陸するには入管法に定める在留資格に適合することが要件とされていますが、適合性は上陸基準省令に具体的に定められ、上陸基準省令に適合していなければ上陸は許可されません。これを上陸基準適合性と言います。出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(上陸基準省令)は、日本の産業や国民生活に及ぼす影響、他の事情を勘案して外国人の受け入れ範囲を定めています。

在留資格「技術」の場合は、技術や知識の修得と報酬の2つの基準が規定されているだけですが、在留資格「研修」は第20号までの基準、企業単独型の「技能実習」は第23号までの基準、団体監理型の「技能実習」は第40号までの基準に係る号数が規定されています。

法務省令、指針等

法務省令には、上陸基準省令のほか、技能実習の企業単独型が受け入れできる外国の公私の機関を定める省令(外国機関省令)、団体監理型が受け入れできる団体の要件を定める省令(団体 要件省令)が定められ、海外現地法人や事業上の取引などの関係のない機関や営利目的とする団体が実習生を受け入れできないように制限を設けています。

省令以外にも技能実習生受け入れのガイドラインを公表、低賃金労働者として扱われやすい技能実習生受け入れの留意点や不正行為の対象などの法的保護などを図り、技能実習制度の円滑かつ適正な実施をするなどを目的に技能実習制度の基本方針(技能実習制度推進事業運営基本方針)が示されています。

団体監理型の技能実習制度は、入管法改正で、2010年(平成22年)以降に監理団体が受け入れ企業である実習実施機関に実習生をあっせんする行為は、職業紹介事業に該当することになり、監理団体は、職業安定法に基づき職業紹介事業の許可や届出が必要となっています。

実務研修の判断

在留資格「研修」と企業内「研修」は違うもの

在留資格「研修」とは「本邦の公私の機関により受け入れられて行う技能、技術又は知識の修得をする活動」(入管法別表第1の4)で、国の公的機関や国際機関等の研修を除き、実務研修のない技能等の修得活動です。

企業で用いられる「研修」は、職務上必要とされる知識や技能を高めることを目的に、一定期間、実務研修のある教育訓練や講習、実習などで、法的な定義はありません。

在留資格「研修」の非実務研修

上陸基準省令では、実務研修は定義されており「商品の生産もしくは販売をする業務または対価を得て役務の提供を行う業務に従事することにより技能等を修得する研修」(上陸基準省令第5号)と規定されています。

日本の公私の機関が研修生を受け入れる場合、実務研修を伴わない非実務研修の受け入れとなりますが、どこまで、非実務研修で、どこからが実務研修に該当するのかが定かではないことがあります。

在留資格「研修」の非実務研修とは、研修の形式が座学などの講義形式で決まるものではなく、研修生の行う作業が企業等の商品の生産や販売をする業務または有償の役務提供の過程の一部を構成するか否かにより決定されます。留意しなければならないのは2010年(平成22年)の入管法改正で在留資格「研修」の上陸基準省令第5号も改正されている点です。この改正で「商品の生産をする業務に係るものにあっては、生産機器の操作に係る実習を含む」という規定が追加されました。

上陸基準省令の改正前は、生産機器の操作の実習は非実務研修として取り扱われていましたが、改正後は実務研修として取り扱われます。

労働契約の締結

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対し、賃金を支払うことについて労働者及び使用者が合意することで成立する契約です(労働契約法第6条)。

在留資格「研修」の活動は「日本での公私の機関により受け入れられて行う技能、技術または知識の修得をする活動」で、労働に従事し賃金を得る活動ではないため、雇用契約の締結は不要です。

在留資格「技能実習」の活動は「日本での公私の機関との雇用契約に基づく活動」であり、技能実習生の受け入れでは、雇用契約の締結が前提となります。

実習実施機関と技能実習生とで労働契約上の権利・義務関係を明確にしておくことが重要です。雇用契約書や労働条件通知書等の書面を日本語だけでなく母国語を併記して作成、技能実習生本人と労働契約を締結します。

労働関係法令の適用

労働基準法その他労働関係法令の適用では、研修生及び技能実習生の労働者性を判断します。

労働基準法では「職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(労働基準法第9条)と規定、労働者を定義、実態が使用者の指揮監督下の労務提供と評価するにふさわしいかどうかで判断されます。

研修生は、一般的に労働者性が否定されますが、研修の目的が労務提供ではなく、かつ賃金の支払いがないことを基本としています。

技能実習生は、雇用契約の締結を前提としているので、労働者を基本として使用者の実習実施機関との雇用関係で報酬を受けます。そのため、労働者性を疑うことなく労働基準法の労働者に該当し、労働関係法令が適用されます。ただし、技能実習実施機関の実習の前に、監理団体において講習の実施が義務付けられています。この講習期間中は技能実習生と実習実施機関との間に雇用関係は生じないため、労働関係法令は適用されません。

労働基準法では労働関係法令のほか、就業規則、労働組合等との協定書等を労働者に周知させることが義務付けられています(労働基準法第106条)。労働者の安全と健康の確保を規定する労働安全衛生法も周知義務が課せられています(労働安全衛生法第101条)。

労働保険・社会保険の適用

研修生が研修中に負傷、疾病等の罹患に備え、保険の加入等の保障措置が求められています。雇用契約の締結が前提の技能実習では、実習実施機関で労災保険及び雇用保険、健康保険及び厚生年金保険に加入して技能実習生の労働災害や傷病等に備えなければなりません。

受け入れ機関と雇用契約のない研修生は、労働者災害補償保険(労災保険)が適用されないため、業務上の労働災害等により傷害を受けても補償されません。

実習実施機関が健康保険及び厚生年金保険の適用に該当しない場合、国民健康保険、国民年金の制度に加入します。

研修手当と賃金

在留資格「研修」の場合

外国人研修制度で研修生を受け入れる場合、多くの場合、研修手当として金銭が支払われます。この「研修手当」は、日本での外国人研修生の「生活費等の実費」として支払われます。

  • 報酬を受ける活動は就労活動で、在留資格「研修」の在留資格に該当しません。
  • 外国人研修生は、技術、技能または知識を修得する活動を行って報酬を受けることはできません。

支給名目が研修手当であっても、外国人研修生の役務に対して支払われた金銭は、労働の対価としての報酬です。労働の対価として報酬かどうかは、研修手当の額、支払状況などから総合的に判断され、社会通念上妥当な範囲を超える場合には研修手当とはみなされず、報酬と判断されます。

在留資格「技能実習」の場合

上陸基準省令でも「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上」(上陸基準省令「技能実習1号イ」第8号/上陸基準省令「技能実習1号ロ」第21号)と規定され、最低賃金を支払えばよいというものではありません。

  • 雇用契約の技能実習は、賃金を得ます。
  • 労働基準法と最低賃金法に留意しなければなりません。

労働基準法は、労働条件等の最低基準を規定した強行法規で、賃金の支払方法(労働基準法第24条)や割増賃金(労働基準法第37条)などが規定されています。最低賃金法で都道府県の地域別と産業別に最低賃金額が公表されており使用者はその最低賃金額以上の賃金を労働者に支払います(最低賃金法第4条)。