国際結婚でお互いの国によって異なる婚姻要件をどう満たす?

配偶者ビザ

婚姻は、宗教儀式とみる国もあれば、契約だとする国もあります。婚姻については様々な考え方があります。

婚姻要件は国によって異なる

婚姻年齢は、法律上の平等によって婚姻年齢を男女同年齢にするのか、それとも、男女の差異を考慮して差をつける国もあります。

日本では「婚姻は、18歳にならなければ、することができない」と定められています。
(民法第731条・平成30年6月13日改正・令和4年4月1日施行)

高校等進学率が98%を超えていることなど、婚姻をするには少なくとも18歳程度の社会的・経済的成熟が必要であると考えられ、女性の婚姻開始年齢を18歳に引き上げることなり、男女ともに18歳以上に婚姻することができるとしたものです。

女性の婚姻開始年齢が16歳から18歳へ引き上げられましたが、令和4年4月1日までに16歳以上になっている女性は、妊娠の有無にかかわらず結婚できます。施行時に16歳や17歳の女性がすでに結婚を予定している場合、民法改正で結婚の予定を妨げないように配慮されています。この場合、婚姻には親の同意が必要です。

中国で婚姻するには、婚姻年齢が「男は22歳、女は20歳」と定められています。

日本は男女ともに18歳以上ですので、日本と中国には婚姻年齢に違いがあります。また、中国には女性の再婚禁止期間がありません。国によって、法制度が異なるので、国際結婚の婚姻手続で、どの国の法を適用していくのかという問題があります。

法律における婚姻とは

「法の適用に関する通則法」は、婚姻の成立(実質的成立要件と婚姻の形式的要件)、婚姻の効力、婚姻の解消とに分けて規定しています。

婚姻の成立

婚姻の効力

婚姻の解消

「法の適用に関する通則法」は、自国の法律だけでなく他国の法律にも関係します。国際私法とも呼ばれ国際結婚では重要です。

婚姻の成立

日本の民法は、婚姻年齢を18歳と定めています。中国では、男は22歳、女は20歳が婚姻年齢です。婚姻の成立は、各当事者について、その本国法による(法の適用に関する通則法24条1項)とされています。国籍が異なる人と婚姻した場合、どちらの国の法律を適用すべきかが重要になります。これを決定するのが「法の適用に関する通則法」です。

ある国の法が優れている場合もありますし、劣っている場合もありますが、平等であり中立的な視点で各国の法を対等のものとしています。

自国と他国の要件(一方的要件と双方的要件)

世界各国の婚姻の実質的要件は、それぞれの国の法律や慣習で定められ、日本の実質的要件とは異なることがあります。国際結婚ではお互いの国の実質的要件が一致しないことがほとんどです。

本人だけがその本国の条件を満たしていればよいというのが「一方的要件」で、本人と相手もその条件を満たしていなければならないのが「双方的要件」です。

国際結婚では各当事者それぞれの国の実質的要件が適用されます。婚姻の成立は、各当事者ごとにその本国法によるとされているからです。しかし、お互いの実質的要件が異なる場合、相手がその国の法律や慣習に反することになってはならないという配慮があります。(双方的要件)

各当事者それぞれの国の実質的要件を満たし、互いに相手国の実質的要件をも満たした上で、お互いが問題なく婚姻を成立させます。

一方的要件

一方的要件は、婚姻年齢、両親の同意などがあります。

例えば、日本で日本人男性と中国人女性が結婚する場合、日本人男性については日本の法律、中国人女性は中国の法律が適用されます。これが配分的適用です。婚姻前の二人は対等で、それぞれの本国法で判断されます。

たとえば、18歳の中国人女性は、中国では婚姻年齢に達していない為、婚姻することが出来ません。(しかし、日本で日本の方式により婚姻する場合は、反致により日本の法律が適用され、中国の婚姻年齢20歳に達していなくても、婚姻する事が出来ます)

双方的要件

双方的要件は、近親婚の禁止、重婚の禁止、再婚禁止期間などがあります。

たとえば、イスラム教国の一夫多妻性の国、重婚が認められている国の男性が、既に他の女性と婚姻中なら、日本での日本人と結婚は認められません。

お互いが互いに相手国の法律を準拠法としたらどうすればよい?

中国では、婚姻年齢が男性22歳、女性20歳です。日本の婚姻年齢は18歳以上ですが、中国の法律が適用された場合、18歳では結婚要件を満たさないということになりそうです。

しかし、中国では「中国人と中国人以外の婚姻には、婚姻手続きをした法律を適用する」という規定があるため、婚姻手続きをする場所が日本であれば、反致(はんち)により日本の法律が適用されるため、結婚要件を満たします。

反致(はんち)とは、他国の法律を適用するということです。自国の法律では認められないことが、他国で他国の法律が適用されることをいいます。

当事者の一方の本国法によって結婚することはできる?

「法の適用に関する通則法」に関係なく、当事者の一方の本国法に適合する方式は有効です。

外国で日本人と外国人の婚姻がされた場合、外国の本国法の要件を満たせば、日本でも有効と認められます。ただし、日本人が婚姻の当事者となる場合は、常に日本の法を適用すべきことと規定があるので届出は必要です。

まとめ

このように、婚姻に関する法律は、国によってさまざまです。外国式の婚姻をしたことにより、相続関連が複雑になることもあります。日本でも相手の国でも婚姻届けを出す場合は、手順が重要になることも多いです。相手国での婚姻にはこだわらず、日本での婚姻と配偶者ビザを取れればよいと考える方もいるかもしれませんが、将来にわたっていろいろな可能性を想定して、手続きを進めることをおすすめします。