会社の設立登記が完了したら、すぐに提出が必要な届出書があります。提出先は、税務署・都道府県税事務所・市役所などの役所の3か所です。それぞれに届出書があり、提出期限も決まっています。期限内に提出できないと税務上のメリットを受けられないので、注意が必要です。提出時は定款などの添付書類も必要になるので、余裕をもって準備し届け出をすることをおすすめします。
所轄税務署へ提出する書類
次の届出書を納税地の所轄税務署長宛に提出します。各届出書は国税庁サイトよりダウンロードできます。提出は、時間外収受箱への投函や、郵送でも可能です。
法人設立届出書
設立の日以後2か月以内に納税地の所轄税務署長宛に提出します。
設立の日以後2か月以内に「法人設立届出書」を納税地の所轄税務署長宛に提出します。届出書に法人代表者印(実印)を押印し、下記の添付書類を添えて提出します。
法人設立届出書に添付する書類
青色申告の承認申請書
事業年度開始の日の前日までに納税地の所轄税務署長宛に提出します。
青色申告を選択する場合は、「青色申告の承認申請書」を納税地の所轄税務署長宛に提出します。これを提出しないと、青色申告をすることができず白色申告をしなければなりません。青色申告とは、会計帳簿に正確な記帳及び申告を行う納税者に税務上の特典を与える制度で、次の特典を受けることができます。
青色申告をした場合の特典
給与支払事務所等の開設届出書
給与・報酬などの支払を取り扱う事務所などを開設した日から1か月以内に納税地の所轄税務署長宛に提出します。
役員や従業員の給与支払がある場合、税理士・弁護士等への報酬支払がある場合、「給与支払事務所等の開設届出書」を納税地の所轄税務署長宛に提出します。
法定調書等の提出
法定調書の対象年の翌年の1月31日までに所轄の税務署に提出する必要があります。
所轄税務署へ提出する法定調書
法定調書とは給与、報酬、不動産使用料等の支払者に対して所轄税務署への提出が義務付けられている書類です。給与、報酬、不動産使用料等の支払の種類で、様式があります。
法定調書には次のようなものがあります
市区町村へ提出する法定調書
地方税法でも給与・賞与等の支払で「給与支払報告書」が義務付けられ、退職金支払は「特別徴収票」の提出が義務付けられています。
都道府県税事務所及び市区町村役場への提出
次の届出書を所管都道府県税事務所等及び市区町村役場に提出します。
事業開始等申告書
各都道府県・市区町村の提出期限までに所管都道府県税事務所等及び市区町村役場に提出します。
事業開始等申告書に法人代表者印(実印)を押印し、次の添付書類を添えて提出します。
事業開始等申告書に添付する書類
状況に応じて所轄税務署へ提出する書類
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 兼 納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書
適用を受ける月の前月末までに納税地の所轄税務署長宛に提出します。
給与・報酬等の支払がある場合、支払の都度、所得税を徴収、徴収した月の翌月10日までに納付します。つまり、源泉所得税の納付手続きは毎月行うことが原則となりますが、給与支給人員が常時10人未満である等の要件を満たした源泉徴収義務者については、任意の選択で、7月10日と1月20日の年間2回のみの納付とすることが認められます。
棚卸資産の評価方法の届出書
設立第1期の確定申告書の提出期限までに納税地の税務署長宛に提出します。
決算期末の在庫棚卸商品等の評価方法で、原則法である最終仕入原価法による原価法以外の方法により評価する場合、設立第1期の確定申告書の提出期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を納税地の税務署長宛に提出します。
減価償却資産の償却方法の届出書
設立第1期の確定申告書の提出期限までに納税地の税務署長宛に提出します。
建物附属設備や構築物、器具備品等の減価償却資産の減価償却限度額の計算で、原則法である定率法以外の方法により計算を行う場合、設立第1期の確定申告書の提出期限までに「減価償却資産の償却方法の届出書」を納税地の税務署長宛に提出します。
消費税の届出書
各事業年度終了後2か月以内に消費税の申告書を提出し、消費税を納付もしくは還付を受けます。
事業者は、顧客から預かった消費税(仮受消費税)と、仕入先等に支払った消費税(仮受消費税)とを相殺、仮受消費税が多ければ国に納付、仮払消費税が多ければ国から還付してもらう仕組みになっています。これらはバランスシート上の資産(仮払消費税)や負債(仮受消費税)の増減で行われていて、事業者は消費税を納税したとしても損益計算には影響しません。このような消費税を納付・還付を受けるのは、その事業者が「消費税の課税事業者」のみです。
「消費税の課税事業者」とは、次に該当する事業者です
上記に該当しない次のような事業者が「免税事業者」です
免税事業者は消費税を申告・納税する義務がなく、還付を受ける権利もありません。
免税事業者に該当する場合でも、選択して課税事業者となることも可能です。仕入れの仮払消費税が売上の仮受消費税よりも多くなることが予想される場合、課税事業者を選択しておけば消費税の還付を受けることができます。課税事業者を選択すると、2年間、課税事業者を継続しなければなりません。
その他、会社設立後に決めることなど
役員報酬額の決定
会社が役員に支給する役員報酬を損金とするためには、「定期同額給与」「事前確定届出給与」または「一定の利益連動給与」のいずれかに該当するもので、一般的に採用されているのは定期同額給与です。
定期同額給与
毎事業年度開始から3か月以内であれば増額改定をすることができます。
「定期同額給与」とは、役員報酬を毎月同額支払っている場合になります。この場合、税務署への事前の届出書の提出は必要なく、原則として損金算入となります。毎月同額の役員報酬以外の臨時の給与などは損金となりません。また、役員報酬を期の途中で増額した場合、増額部分は損金となりません。
事前確定届出給与
事業年度開始の日から4か月以内に所轄税務署長宛に提出します。
「事前確定届出給与」とは、事業年度中に支払う臨時給与を確定し、確定金額を事前に税務署へ届け出て支給する役員給与です。役員に対し支給する臨時給与は役員賞与として損金不算入となりますが、事前確定届出給与では損金算入が認められます。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
所轄税務署へ提出した日の翌月に支払う給与などから特例が適用されます。
納期限の特例等の承認を受けている場合
給与支給人員が常時10人未満であるなどの源泉徴収義務者が「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書」を提出、承認を受けている場合、半年分をまとめて納付することができます。
納期限の特例の承認を受けていない場合
役員や従業員への給与支払の場合、税理士、弁護士、経営コンサルタント等への報酬の支払がある場合、支払の都度所得税を徴収、徴収した月の翌月10日までに納付しなければなりません。「給与支払事務所等の開設届出書」を納税地の所轄税務署に提出、税務署から会社宛に源泉税の納付書が送付されます。徴収した源泉税は、納付書を使用して金融機関又は所轄税務署の窓口にて納付手続を行います。
年末調整
年末調整は、その年最後に給与の支払をする月に行います。
「年末調整」とは、給与の支払を受ける人で、毎月の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした所得税額と、その年の給与総額について納めなければならない年税額とを比べ、過不足額を精算する手続です。給与所得者は「年末調整」でその年の所得税の納税が完了、確定申告する必要はありません。