外国人が日本で起業するとき、発起人になれる?定款を作成するために必要なこと

定款(ていかん)とは、法人の目的・組織・活動・構成員・業務執行などについての基本規約・基本規則そのもの、およびその内容を紙や電子媒体に記録したもののことです。日本で会社を設立するためには、定款を作成し、「定款の認証」を受けなければなりません。定款に記載すべき事項は法律によってあらかじめ決められており、記載漏れがあると受理されません。会社は、定款の内容にそって運営していかなければならないので、定款に記載する事項はとても重要なものといえます。定款には、絶対に記載しなければならない事項と、記載がなくてもよいが定款に記載しないと効力が生じない事項など、細かく決められています。

発起人

発起人の資格に制限はなく、外国人の発起人も制限はありません。

  • 発起人は、会社の組織・活動を定める規則の定款を作成します。
  • 設立時に株式を1株以上引き受け、会社成立後の株主となります(会社法25条)。
  • 発起人は、書面に署名または記名押印、電磁的記録で作成したときは電子署名をします(会社法26条)。

定款の概要

定款には、最低限記載すべき「絶対的記載事項」と、記載や記録しなくても効力に影響しないが記載や記録を欠くと効力が生じない「相対的記載事項」があります。

具体例として、(1)変態設立事項(会社法28条)、(2)全部の株式の内容に関する特別の定めに関する事項(会社法107条2項)、(3)種類株式に関する事項(会社法108条2項)等があります。

単に定款に記載(記録)するにすぎない事項を「任意的記載事項」といい、具体的には、名義書換、その他株式事務に関する手続、定時株主総会招集の時期、株主総会の議長、決算期などがあります。

定款の「絶対的記載事項」

絶対的記載事項は、以下の通りです。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 出資の財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名または名称及び住所

発行可能株式総数は、会社設立を容易にするため、株式引受け状況で設立登記申請までに定めればよく、定款認証時に記載は不要ですが、設立登記時の定款には記載します。

会社の目的

会社の目的は、商号等とともに会社を識別する基準で、株主や会社の取引先にとって重要なので、定款の絶対的記載事項です。

会社は資本を元手に事業を行い、利益を目指して設立されます。これが会社の目的です。会社は目的の範囲内で「権利能力」を持ちますが、目的の範囲が取締役等の解釈や裁量により拡大してしまうと、予期しない事業を行うなどして、株主や会社関係者が損害を受けます。

目的の具体性

旧法下では、具体的に目的を定める必要がありましたが、会社法施行後は、類似商号規制は撤廃され、①営利性、②適法性、③明確性の要件が充足すればよいとされ、目的の具体性を問わないとされました。予定しない事業も目的にしたいという外国人起業家もいますが、多くの事業を目的としてしまうと、何をしたい会社なのか、目的では判断ができなくなります。

「目的の範囲内の行為」の基準

会社の権利能力は目的で制限されますが、「目的の範囲内の行為」の基準は、定款に明示された目的自体に限られません。目的遂行で直接または間接な行為であれば、すべて含まれると解され、会社の目的を細分化する必要はありません。具体性がない目的が定款にあり、登記簿で公示されて不利益があったとしても、会社の構成員や取引先などの債権者、利害関係人が自ら負担すべきとされています。

許認可が必要となる事業は注意が必要

許認可の要る事業は注意が必要です。許認可庁によっては、目的の記載表現について具体性を重視するところもあります。

外国人に多い「中古自動車の販売や輸出」に関しては、古物営業許可が必要になりますので、注意すべきポイントです。

商号の決定

商号は、会社の名称(会社法6条1項)で、商号の選定は自由です。

  • 不動産業者の商号に運輸の文字があっても、運送業者の商号に不動産の文字があっても問題ありません。
  • しかし、法令で使用が禁止されている文字は使えません。
    • 例えば、銀行、信託、証券、保険等の事業でない会社が、その業者であるような文字を用いることはできません(銀行法6条2項,信託業法14条2項 等)。
  • 商号には「株式会社」を含めなくてはなりません(会社法6条2項)。
  • 商号に会社の本店支店であることや、会社の一営業部門である「事業部」、「不動産部」のような文字は使えず、「支店」「支社」「出張所」は認められません。
  • 商号は、ローマ字(大文字及び小文字)、アラビア数字が認められます。
  • 字句を区切る符号として6種類の符号が使えます。
    • アンパサンド(&)、アポストロフィー(’)、コンマ(,) 、ハイフン(-) 、ピリオド(.)、中点(・)
  • ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合、区切る空白(スペース)も使えます。

隣地に同一商号、同一目的があっても設立可能です。法務局で事前に商号を調査することもありません。

  • 同一本店に同一商号、同一目的での設立は受理されません。

商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(本店)の所在場所が他人の商号の登記の営業所の所在場所と同一であるときは、できない(商業登記法27条)とする規制があるためです。本店が異なれば、同一商号、同一目的の設立は可能ということになります。

  • 不正の目的で、他人の会社であると誤認されるおそれのある名称や商号を使用することはできません。
    (会社法8条1項)

損害があれば賠償請求も可能です(民法709条)。商号使用権です。不正競争防止法では、他人の商品等表示として広く認識されているものと同一、類似の商品等表示を使用することは、不正競争として規制されています(不正競争防止法 2条1項1号)。

外国人経営者と事業所の確保

外国人が日本で事業を起こす場合「経営・管理」の在留資格に該当し、入管法第7条第1項 第2号の基準として事業所が日本にあること、ただし、事業が開始されていない場合は、 事業として使う施設が日本にあることです。

法務省のガイドラインでは、在留資格の審査で本店の所在場所は、実質面を考慮すべきとなっています。自宅を本店所在地として登記すると、ガイドラインでは事業所は賃貸契約で構わないが、居住用は認められないとされています。自宅兼用事務所は事業所として表札を掲示できるか、居住スペースと事務所スペースとの区分けがしっかり、されているかも基準となります。

定款の絶対的記載事項の本店の所在地は、最小の行政区画「当会社の本店は○○市に置く」で足ります。

事務所としての実体があるかどうかを立証

会社法とは異なる観点で、事務所としての実体があるかどうかを立証する必要があります。

  • 経済活動が単一の経営主体の下で一定の場所を占めていること。
  • 財またはサービスの生産または提供が、人及び設備を有し、継続的に行われていること。

総務省の日本標準産業分類一般原則第2項によれば、この2点を満たしている場合、基準省令の「事業所の確保(存在)」に適合しているものと認められます。

マンスリーマンションや移動式店舗

3か月以内の短期間賃貸スペース等を利用したり、処分可能な屋台等を利用する場合は、基準省令の要件に適合しているとは認められません。マンスリーマンションや移動式店舗なども難しくなります。

住居を事業所とすることの可否

物件の賃貸借契約で使用目的を事業用、店舗、事務所等の事業目的を明らかにする必要がある。住居として賃借している物件の一部を使用して事業が運営されるような場合、住居目的以外での使用を貸主が認めていること、借主も当該法人が事業所として使用することを認めていること、事業目的での部屋を有していること、公共料金等の費用の支払の取決めが明確になっていること、看板などを掲げていることが必要です。

インキュベーションオフィスの可否

インキュベーターとは、ビジネスサービス等への橋渡しを行う団体・組織です。外国人が日本で起業をする際、インキュベーターを利用するケースが多いです。起業支援を目的に一時的なオフィスの確保で、基準省令「事業所の確保(存在)」の要件に適合しているとされます。

設立時に出資される財産価額と最低額

会社法は、発起人や設立募集株式の引受人が期日までに出資の履行をしなかった場合、設立時発行株式の株主となる権利を失います(会社法36条3項 63条3項)。定款の絶対的記載事項「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」と規定しています。定款で発起人の引き受けた出資金額の合計より低い出資最低額を記載しておけば、対応ができます。

最低資本金制度の廃止と外国人の出資

平成18年の新会社法で株式会社の設立には出資が必要だが(会社法27条4号,34条1項,63条1項)、設立時の出資額規制は設けられず、資本金1円でも株式会社の設立が可能です。

発起人の氏名又は名称及び住所

発起人の氏名または名称及び住所は、定款の絶対的記載事項です(会社法27 条5号)。発起人とは、会社成立後の株主で、当該会社の企画者です。ただし、現実に設立事務を執行することを要しないとされます。発起人の人数の制限はありません。外国人でも可能です。発起人の引受株数や払込金額は、任意的記載事項です。

外国人経営者と役員の選定

日本の会社法の役員は、取締役・監査役・会計参与、これらに会計監査人を含んで役員等と言います。

日本の会社法の役員は、取締役・監査役・会計参与です(会社法329条)、これらに会計監査人を含んで役員等と言います(会社法423条)。

役員等は定款の絶対的記載事項ではない

会社法は、株式会社の設立で、会社の機関となる者を「設立時取締役」「設立時監査役」と明確にしています。設立前に選任できるのは、将来、取締役、監査役になる「予定」の者だけで、設立後の会社の機関である取締役、監査役等とは異なる概念として、「設立時取締役」、「設立時監査役」等を定義しています。

取締役会

公開会社の場合は、取締役会を設置しなければなりません(会社法 327条1項1号)。公開会社とは「その発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」(会社法2条5号)と定義されています。会社法では、発行する株式の1株でも譲渡制限を付していない株式を発行していれば「公開会社」で、発行するすべての株式に譲渡制限を付している当該会社を公開会社でない会社 (非公開会社)としています。

取締役

株式会社には、1人または2人以上の取締役を置かなければならず(会社法 326条1項)、取締役会設置会社には、取締役は3人以上必要です(会社法 331条5項)。外国人起業家の場合、株式の流通を予定していない会社であることが多く、取締役も1名であることが多いです。取締役会を設置しない場合、定款で人数の制限をしておくことも可能です。取締役の員数が、最低数を欠くこととなるときに備え、補欠の選任をすることができます(会社法329条3項,会社法施行規則96条)。取締役が1人でもよいのは、非公開会社のうち取締役会を設置しない会社となります。

取締役になれない「欠格事由」

法人や成年被後見人、被保佐人などは、取締役とはなれません。

会社法上、取締役の欠格事由で規定があります(会社法331条1項)。外国人は欠格事由に挙げられておらず、外国人であることで取締役に就任できないということはありません。

公開会社は、株式の流通を予定、株主の交代可能性を前提としており、定款でも取締役を株主に限るとすることはできません。非公開会社では、株式の譲渡を制限するので取締役を株主に限定する事が可能です(会社法331条2項)。

設立時の取締役

会社設立時、発起人会において(会社法38条1項)設立時取締役を選任するが、設立時取締役は原始定款で定めても構いません。

発起設立の場合、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなされ(会社法38条3項)、設立時取締役は会社の成立と同時に取締役となります(会社法38条1項)。

設立後の取締役

会社設立後の取締役の選任・解任などについて、定款作成では前提となる要件があります。

選任について

取締役の選任は株主総会の専決事項です。取締役選任の決議は、普通決議による(会社法309条1項)。一般的には定款で定足数を3分の1に軽減することが多いが、定款で定める場合でも定足数を総株主の議決権の3分の1未満に軽減することはできません。

解任について

取締役など役員及び会計監査人は、いつでも株主総会の決議要件で解任することができます(会社法339条1項)。定款で議決要件を加重することは可能です(会社法341条)。解任を出席株主の議決権の3分の2以上に引き上げる規定で、特別決議における議決要件と同様にすることが可能です。

任期について

委員会設置会社以外の会社の取締役の任期は、選任後2年以内の事業年度の定時総会の終了時までですが、定款または株主総会の決議で、その任期を短縮することができます(会社法332条1項)。非公開会社では、定款で取締役の任期を選任後10年以内の最終事業年度の定時総会の終了時までと延長できます(会社法332条2項)。

代表取締役の選定

取締役会非設置会社の場合

取締役会非設置会社では、取締役が会社を代表し(会社法349条1項)、取締役が2人以上いる場合には各自会社を代表します(会社法349条2項)。定款の定めで取締役の互選または株主総会の決議で、取締役の中から代表取締役を定めることができます(会社法349条3項)。

取締役会設置会社の場合

取締役会設置会社では、取締役会で取締役の中から代表取締役を選定します(会社法362条3項)。代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有します(会社法349条4項)。代表取締役の人数は法律上の制限はなく、定款で自由に員数を定めることができ、代表取締役が数人いる場合には、各自が代表権を有します。

役付取締役

会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役が設けられ、地位を明確にする規定のある例が多いです。

役付取締役と呼ばれ、他の取締役と区別されています。代表取締役会長や、代表権のない取締役社長などもいます。

取締役会と監査役設置について

取締役会の設置が強制されるのは、公開会社、監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社です(会社法327条1項)。

定款の定めで任意に設置することは可能です(会社法 326条2項)。

監査役

  • 取締役会設置会社は、株主総会の決議事項が減少、株主総会での株主の関与が弱くなります。
  • 監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を除き監査役を設置することが強制されます。
  • 非公開会社は、会計参与を置く場合は、監査役設置義務を免れます(会社法327条2項)。
  • 非公開会社では、定款規定で監査役の監査範囲を会計に関するものに限定することができます(会社法389条1項)。

取締役会の招集

取締役会は、各取締役が招集するのが原則ですが、定款または取締役会で招集権者を定めることができます(会社法366条1項)が、定款で定めているのが通常です。定款で招集権者を議長として定める規定を置くことが多いです。招集権者でない取締役は、必要なら招集権者に対し、取締役会の目的を示して取締役会の招集を請求することができます(会社法366条2項)。取締役会を招集するには、1週間前に各取締役(各監査役)に招集通知を発送する必要があります。招集期間は、定款の定めで短縮することができます(会社法368条1項)。

取締役会の議決要件

取締役会の決議は、議決に参加できる取締役の過半数が出席、その過半数をもって行います。要件の軽減は、定款の定めではできないため、定款作成時に注意が必要です。

取締役の責任

取締役を含む役員(取締役・会計参与・監査役)及び会計監査人は、株主総会の委任に基づき会社の経営等を行います。

役員は雇用や請負契約ではなく、委任契約です。株主総会で役員を選任、当該役員等は就任承諾をします。役員が適正に職務をしないと、会社は大きな損害を受けます。役員は、会社に役員として職務を行う善管注意義務を負います(会社法330条・民法644条)。

取締役は、法令、定款及び株主総会の決議を遵守、会社に忠実にその職務を遂行する忠実義務を負います(会社法355条)。役員が、任務を怠り会社に損害を与えれば、損害を賠償しなければなりません(会社法423条1項)。

この責任は、総株主の同意がなければ免除できません(会社法424条)。

会計参与

会計参与は、中小企業の計算の適正化を図るための役員です。

会計参与は、中小企業の計算の適正化を図るための役員です。公認会計士または税理士などの資格者が取締役等と共同して計算書類等の作成に関与することで信頼を高めることを目的として設けられました。非公開会社で中小企業が取締役会を設置する場合、監査役を置かずに会計参与を置けば足りるので、外国人が起業する場合、取締役会を設置する場合は、公認会計士または税理士に会計参与になってもらう方法もあります。会計参与は、取締役、監査役もしくは執行役または支配人その他の使用人、業務停止処分を受けた者等はなることができません(会社法333条)。その選任及び解任は、株主総会の決議によります(会社法329条1項,339条1項)。

任期は、取締役の任期の規定が準用され、選任後2年以内に終了する事業年度のうちの最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています。

決算期を決める

「決算期」とは、この事業年度の末日で、法人の決算期は自由に決めることができ、法人設立後も決算期は変更できます。

会社の事業年度は1年を超えることはできませんが、1年を2事業年度以上に分けることはできます。定款で、事業年度や決算期の記載は必要ありませんが、取締役等の任期や利益配当の時期とも関連があり、定款に記載しておくのが通常です。株式会社は、各事業年度の計算書類及び事業報告並びに附属明細書を作成、監査役や会計監査人の監査、取締役会の承認を受けて、定時株主総会の承認を受けます(会社法435条から439条まで)。定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集します(会社法296条1項)。剰余金の配当は回数の制限を設けず、年に何回でもできます(会社法453条,454条1項)。取締役会設置会社で、1事業年度の途中で1回だけ取締役会の決議で金銭に限って剰余金の配当をする旨を定款で定めることができ、これを中間配当と言います。

株主は、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利及び株主総会における議決権その他会社法の規定により認められる権利があり、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利を全部与えない旨の定款の定めは無効です(会社法105条)。

会社の実印を作る

提出した印鑑は会社の実印、法人実印(代表者印)と呼ばれ、印鑑証明書が発行され、重要な取引で用いられます。

登記の申請書に押印すべき者は印鑑を提出しなければならない(商業登記法20条1項)とされています。登記の申請書に押印すべき者は、株式会社の登記であれば、登記申請行為を行う代表者です。

登記の申請書に押印すべき者に、申請と同時に、その印鑑の印影を提出させ、提出印と申請書または委任状に押印された印影とを照合することで、申請人に申請権限があることを確認する制度です。

代表者が数名いる場合

会社の代表者が数人いる場合、印鑑の提出義務があるのは、登記の申請書に押印する代表者です。登記申請行為を担当しない代表者は提出義務はありません。代表者が数人いる場合、1つの印鑑を共有することはできません。

代表者が外国人である場合

外国人は、印鑑の慣習がないので、登記所に印鑑を提出する必要はありませんが、登記申請の場合、登記の申請書や委任状の署名が本人のものであることの本国官憲の証明書の添付が必要です。登記申請書に押印する印鑑に代えて、署名を法務局に提出することはできません。印鑑を届け出ておけば、登記申請のたびに署名証明書を添付する必要はありません。

届出印のサイズ

印鑑の大きさは、辺の長さが1センチの正方形に収まるもの、または辺の長さが3センチの正方形に収まらないものであってはなりません(商業登記規則9条3項)。印鑑は、照合に適するものでなければなりません(商業登記規則9条4 項)。印鑑を提出した者は、印鑑届出事項のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載した書面を提出、印鑑カードの交付を請求することができます(商業登記規則9条の4第1項前段)。

その他の基本事項を決める

公告の方法

株式会社は、公告方法として、1.官報に掲載する方法、2.時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、3.電子公告のいずれかを定款で定めることができます。定款に記載がない場合は官報となります(会社法939条4項)。官報は、法令の内容や、国の公文書その他の公示事項を掲載し、広く国民に周知を図るべく、独立行政法人国立印刷局が発行する政府の機関紙です。中小企業は、官報に掲載すことが多いです。日刊新聞紙の場合、当該新聞が複数の発行地で発行されているとき、すべての発行地の紙面に公告を掲載しなければなりません。電子公告は、インターネットのホームページに掲載する方法です。電子公告の場合、定款には、電子公告を公告の方法とする旨を定めれば足ります。公告の方法は、「官報又は日本経済新聞」という選択的記載はできません。

定款の相対的記載事項

会社法は、法律の各条項に一応の定めがある事項について定款で異なる定めを置くことができる場合を、条項に明記します。法律に「定款により別段の定めをすることができる」旨の規定がないと、それと異なる定款の定めは認められません。会社法で「定款により別段の定めをすることができる」旨の定めがある事項を相対的記載事項と言います。

任意的記載事項

定款の記載事項のうち、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で、会社法その他の強行法規の規定等に違反しないものを任意的記載事項と言います。任意的記載事項は、定款に定めた範囲で株主その他の内部の者を拘束します。一度定めた任意的記載事項を変更するには、定款変更の手続が必要となります。

定款の順番

定款は、総則・株式・株主総会・執行機関・監査機関・計算・附則の順となります。

「執行機関」「監査機関」は、会社法の認める機関設計に応じ、適切な章題をつけます。「総則」の章には、商号、目的、本店所在地を定めます。

定款作成と公証人の認証

外国人が株式会社の発起人となることを制限した規定はなく、在留資格による制限もないので、外国人は発起人となれます。

その行為能力は本国法によるが、本国法により行為能力を制限されていたとして、取引の相手方は制限を知らない場合も多いです。日本でした法律行為は、本国法で能力を制限されていても、日本法で能力者である場合は、能力者とみなされます。定款の認証は、書面による定款の場合、発起人が公証人の面前で定款の署名または記名押印が自己のものであることを自認し、その旨を記載することにより行います。

電磁的記録による定款の場合、その面前で、発起人をして電磁的記録に記録された定款に電子署名をしたことを自認し、その旨を内容とする情報を電磁的記録に記録された定款に電磁的方式により付します。定款の認証手続は代理人によってもできます。

面前署名・面前自認

面前署名、面前自認の場合、発起人の本人確認資料が必要です。印鑑証明書が該当します。印鑑登録証明書があれば、定款に記載された発起人の住所、氏名及び押印の正確性を確認することもできるので、実務上は印鑑登録証明書の提出によるのが通常です。印鑑登録証明書は、発行後3か月以内のものに限られます。外国人起業家が発起人の場合、外国人登録原票に登録されていれば、印鑑登録ができるので、日本人と同様に印鑑登録証明書により本人確認をすることができます。

代理自認・作成代理

代理人の本人確認資料は、本人の場合と同様ですが、他に代理権限を証明するものとして、委任状とその成立を証するものが必要となります。外国人が日本で印鑑登録していれば、委任状に登録印(実印)を押捺することで印鑑登録証明書により委任状の成立を証明することになります。当該国が、印鑑登録制度を採用していないときは、委任状は証明(サイン)により、委任状に当該国の領事もしくは公証人の認証を受けるか、当該国の領事等公的機関の署名(サイン)証明で委任状の真正を確認する必要があります。

公証人の認証

株式会社の定款は、公証人の認証を受けなければ効力はありません。定款の認証の事務は、会社の本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局の所属公証人が扱います(公証人法62条ノ2)。管轄区域外の公証人が認証した定款は無効です。

委任状と代理人の印鑑登録証明書等(代理人による嘱託の場合)

認証の嘱託は代理人でも可能です。代理人による嘱託の場合、発起人が記名押印(署名)した委任状とその印鑑登録証明書のほか、公証人が出頭した代理人の氏名を知り、かつ、これと面識がある場合を除き、人違いでないことを証明するため、代理人の印鑑登録証明書または運転免許証もしくは旅券等確認資料の提出が必要です(公証人法62条ノ3第4項,60条,28条)。本人を代理して嘱託する権限があることを証明する委任状を提出しなければなりません。発起人の1人が他の発起人の一部又は全部を代理して嘱託することができます。