日本で起業、在留資格「経営・管理」を視野に株式会社の設立

設立会社の種類の決定

外国人が日本で起業をするには、在留資格が重要な課題となります。

起業するには、「個人事業」か「会社」か、株主の構成や機関設計をどうするかなど、会社の組織形態や、税務面で有利か不利ということがあります。

外国人が日本で起業し、在留資格「経営・管理」の入国管理局による審査を視野に、株式会社の設立を説明します。

会社の成立

  • 会社は、本店所在地で設立登記をして成立します
    (株式会社は会社法49条、持分会社である合名会社・合資会社・合同会社は会社法579条)
  • 登記をして「法人格」を取得します
  • 「経営・管理」の在留資格は会社の設立登記を要件としていません

資本金が公示される株式会社、合同会社は、外国人の投資額を証明できて、添付資料から申請人が外国人の投資と判断しやすく、多く利用されています。

会社の種類

  • 株式会社
  • 合名会社
  • 合資会社
  • 合同会社

合同会社

合同会社は平成18年の新会社法で創設された新しい会社類型です。

合名会社の出資者は、無限責任社員のみで構成される会社で、合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両者から構成される会社です。

合名会社も合資会社も人的信頼関係の会社で、資本金がない会社で利用は少ないです。

有限会社

有限会社の設立が旧有限会社法で認められていましたが、平成18年の新会社法で有限会社は株式会社に統合されました。

有限会社は「特例有限会社」となり株式会社としてありますが、平成18年以降、新たな有限会社の設立は認められていません。

合同会社

出資者の有限責任で組合的規律が適用される新会社類型として合同会社が創設されました。

合同会社は、合名会社、合資会社と同じく持分会社ですが、有限責任社員のみで構成されます。株式会社と共通です。資本金についても株式会社と共通です。

合同会社の注意点

  • 合同会社は、合名会社、合資会社と同じく、損益配分や権限分配を出資割合と切り離して自由に決定でき、ベンチャービジネス等に向いています。
  • 合同会社は多数の参加ではなく、株主総会の開催手続や公告、現物出資の検査役の調査が不要で、手続が簡素で迅速な意思決定ができます。
  • 合同会社は、日本版LLC (Limited Liability Company)ですが、米国版LLCのようにパススルー課税を選択できません。
    • パススルー課税とは、組織の構成員に直接課税して法人では課税しない制度で、構成員課税とも言われます。
    • 合同会社は法人なので、利益があれば法人税を課税しないわけにはい かないということで採用を見送られた経緯があります。
    • 日本の合同会社も、米国版LLCと同様にパススルー課税が選択できると誤解する外国人も 多くいます。

合同会社を株式会社に組織変更するとき

合同会社は全社員の同意を得て株式会社への組織変更ができます(会社法746条)。

  • 事業内容で小さく合同会社で会社にして、成長してから株式会社にするのであればよいが、思い違いで株式会社にするのは時間的にも経済的にも損失が生じます。
    • 取締役1名の小規模機関を想定して設立を予定しているのであれば、株式会社は、機関設計の柔軟化が図られ、合同会社に近い組織を作ることも可能です。最初から株式会社を計画した方がよいでしょう。
    • 設立費用では、合同会社の設立は安いですが、株式会社で組織変更の出費は多くなります。
  • 株式会社は、39種類の機関設計が可能です。
  • 柔軟な機関設計が可能ですが、大会社は会計監査人の設置が義務付けられ、また、公開会社である大会社には、機関設計において、取締役会のほか監査役会または指名委員会等設置会社を置く必要があります。

株式会社設立手続の概要

株式会社は、本店の所在地で設立の登記をして成立します(会社法49条)。設立の登記手続が完了したときに、会社が法人格を取得することとなります。

  • 登記手続は、登記事項を添付書類で立証することで、登記の真実性、安定性を担保しています。
  • 会社法上の各規定に従っている旨を、登記官に添付書類で立証します。許認可等が会社成立の条件ではありません。
  • 実体形成プロセスを経て登記がなされれば会社は成立します。
  • 準則主義です。

会社の設立に必要な手続

  • 根本規則である定款を作成する
  • 構成員であり出資者である社員を確定する
  • 組織である機関を備える

これらの添付資料をそろえて、法務局に提出すれば会社は成立します。法人格が付与され、取引主体としての活動が可能となります。

発起設立と募集設立

会社法には2種類の設立方法が規定されています(会社法25条)。

  • 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける「発起設立」
  • 設立時発行株式を引き受ける者を募集する「募集設立」

いずれの方法も、発起人は1株以上設立時発行株式を引き受けます(会社法25条2項)。

発起設立のメリット

  • 発起設立は少人数を予定し、発起人だけで出資をまかなう小規模な会社の設立に適しています。
  • 発起人自らが出資、経営を行う場合に向いており、「経営・管理」の在留資格は発起設立が多いです。

募集設立のメリット

  • 募集設立は発起人だけで出資ができない場合など、大規模な会社の設立に適してますが、設立に関し利害関係人が多くなります。
  • 株主の募集や出資で、払込取扱機関による払込金保管証明が必要であり、創立総会の手続を経なければならないなど、複雑です。
  • 募集設立の場合、発起人以外の出資を予定しているので、定款認証の際、発起人としては要求される印鑑証明書が発起人以外の出資者には要求されません。

「経営・管理」在留資格の認定証明書の交付申請または変更許可申請を予定している外国人が先に発起人として定款認証を受け、後に第三者の出資を募るという方法が、柔軟な資金調達になることもあります。