外国人雇用のために企業側が知っておかなければいけない、雇用契約のこと

就労ビザ

雇用契約の有効性

雇用契約は企業と求職者の契約で、求職者の申込みと企業の承諾があれば成立します。雇用契約書で効力が発生するわけではありません。

雇用契約の労働条件は、労働時間・休憩・休日・賃金・残業の取扱いなど、多岐にわたります。日本の常識や慣習の違いで外国人との雇用契約では誤解を招きやすいことが多いです。誤解が生じないように、雇用契約書や労働条件通知書等の作成は重要です。また、外国人の不安を払拭するため、取り交わす労働条件よりも、さらに詳細な雇用契約書を用意すれば、就業へ不安を少なくすることができます。

在留関係諸申請と雇用契約書

就労活動可能な在留資格が取得できたからといって、どんな仕事でもよいわけではありません。

就労が可能となる在留資格には「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」との条件があります。外国人という理由で不当に低額な賃金で雇用することは許されず、そのような条件や理由は在留資格認定証明書交付や在留資格変更等は許可されません。外国人の賃金は、同等の職務に従事する日本人の賃金を基準にして決定します。在留資格は日本での活動に条件を付すもので、就労活動可能な在留資格が取得できたからといって、どんな仕事でもよいわけではありません。雇用契約書の職務内容が申請する就労活動ができる在留資格の活動内容に該当していなければなりません。

現在の在留期間には、在留期限が設けられ、ほとんどが1年または5年となります(永住者を除く)。雇用契約書の雇用期間は、就労活動可能な在留資格の期限にも影響がある可能性がありますが、最長の在留期間の就労活動ができる在留資格を求めるため、実際の雇用期間を超えて雇用契約書を作成すると、外国人社員の退職や解雇、雇止め等の労使問題を引き起こすことになりかねません。

活動可能な在留資格の申請は、雇用契約書や労働条件通知書等の労働条件を記載した書類を添付しますが、給与額や職務内容、契約期間が申請時の雇用契約書等の記載と異なっていたり、在留資格の変更や在留期間の更新のために偏った記載をしたりすると虚偽申請となる可能性があります。

労働契約上のリスク

労働条件の雇用契約書は、採用企業と外国人の権利・義務関係を書面で明確にすること。

労働関係法規にも労働条件の明示や書面の交付が義務づけられています。雇用契約は一般契約と比べ、契約期間が長期です。未払賃金や機密保持、ハラスメント、競業避止等のリスクを回避するため、権利・義務関係など労働条件を書面で明確にして誤解が生じないようにします。外国人が労働条件を誤解した場合、雇用契約が無効となることもあります。母国語の雇用契約書を用意、契約内容を外国人に理解できるようにしたり、日本語を理解している場合でも「わたしは労働条件の契約内容を十分に理解して契約しました」などの文言を追記したりして、労働条件の内容に誤解が生じないようにします。

労働条件の明示事項

労働条件の明示で、労働基準法第15条は「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定しています。同法施行規則第5条で明示しなければならない労働条件で、絶対的明示事項や使用者が定めをした場合には明示すべき相対的明示事項があります。

絶対的明示事項

  1. 労働契約期間
  2. 就業場所・従事業務
  3. 始業・終業時刻、所定労働時間の超過労働(早出・残業等)の有無・休憩時間・休日・休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合の就業時転換に関する事項
  4. 賃金の決定、計算・支払いの方法及び賃金の締切り・支払いの時期、昇給に関する事項
  5. 退職に関する事項(解雇事由を含む)

相対的明示事項

  1. 退職手当の労働者範囲。退職手当の決定、計算、支払い方法、支払時期
  2. 臨時の賃金、賞与、最低賃金額の事項
  3. 労働者負担の食費、作業用品等の事項
  4. 安全衛生事項
  5. 職業訓練事項
  6. 災害補償、業務外傷病扶助事項
  7. 表彰・制裁事項
  8. 休職事項
労働契約締結時、次の事項は労働条件の書面で交付しなければなりません
  • 労働契約の機関
  • 就業の場所、従事すべき業務
  • 始業および就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間・休日・休暇、労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • 賃金(退職金・賞与などを除く)の決定、計算・支払いの方法、賃金の締切・支払いの時期に関する事項
  • 退職に関する事項
  • 昇給に関する事項については書面交付の必要はありません。

明示された労働条件が事実と相違する場合

規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合には、労働者は、即時に労働契約を解除することができます。

明示内容の相違で労働契約を解除することになった場合に、就業のために住居を変更した労働者が契約解除の日から14日以内に帰郷するときは、使用者(雇用者)は必要な旅費を負担しなければなりません。必要な旅費には、家族の旅費も含みます。