外国人経営者「経営・管理」にも労働保険への加入義務がある

外国人の起業

労働保険は労災保険・雇用保険の総称

労働保険とは労働者災害補償保険(労災保険) と雇用保険とを総称した言葉です。では、これらの保険はどのような事業所が加入義務があるのでしょうか。

労働保険の適用事業所とは

各事業は、労働者をひとりでも使用していれば、法律上労働保険に加入します。

労働保険は、労災保険と雇用保険の総称です。労働保険は事業単位で適用されて、ひとつの会社でも、本社、支店、工場等に分かれていれば、それぞれ独立した事業所となります。

労災保険は政府の保険制度で、業務上や通勤の労働者の負傷・疾病・障害や死亡に対して、労働者やその遺族に保険給付をします。労災保険の適用は、労災保険法第3条「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする」と規定され、労働者を1人でも使用する事業であれば適用事業所となります。

労災保険の適用労働者とは

国籍を問わず雇用形態に関係なく、その事業に使用されている間、すべての労働者が労災保険の給付対象となります。

賃金が支払われる労働者であれば、国籍を問わず、すべての外国人労働者、常用・臨時雇・日雇・アルバイト・パートタイマー等の名称や雇用形態に関係なく、その事業に使用されている間、すべての労働者が労災保険の給付対象となります。

業務上や通勤途中に被災した外国人労働者がオーバーステイなどの不法就労者の場合でも、事故が業務上災害や通勤災害であると認定されれば、外国人労働者がどのような在留資格であっても、労災保険が適用されます。また、就労可能な在留資格を所持している外国人従業員はもちろん、「留学生」、「就学生」または「家族滞在」の在留資格で「資格外活動許可」を取得している場合、アルバイト中に労災事故に罹災したときも労災保険が適用されます。

国籍や在留資格を問わず、オーバーステイなどの不法就労者であっても、労災保険上は労働者として取り扱われ、保険給付の対象になります。

適用労働者にならない者とは

使用者の指揮監督下に労務の提供があり、報酬が提供される労務に対するものかどうかで判断されます。

労災保険の適用労働者は、労働基準法の労働者と同じです。

労働基準法の労働者とは、職業の種類を問わず、使用者の指揮監督下に労務の提供があり、報酬が提供される労務に対するものかどうかで判断されます。

個人事業主として起業した場合の特別加入

特別加入とは、労災保険の適用がない個人事業主に労災保険が適用できる制度で、外国人起業家も同様です。

労災保険は、労働者の災害補償を行うもので、対象は労働基準法の労働者であり、労働者でない個人事業主、自営業者の業務中の災害や通勤災害は対象になっていません。

事業主の中には、業務の実態や災害の発生状況などで、労働者と同じように労災保険によって保護することがふさわしい場合があります。

労災保険の手続き

適用事業所

労働者を1人でも使用している事業所は労働保険の適用事業になります。労働者は、正社員、パートタイマー、アルバイト、日雇労働者等の雇用形態に関係なく労災保険の適用を受けるので、労働者を1人でも雇用した場合、労災保険の「保険関係成立届」を提出します。外国人が起業した場合も同様です。届出書は、保険が成立した日(労働者を使用した日)の翌日から起算、10日以内に、労働基準監督署に提出します。用紙は3枚複写で「事業主控」に労働保険番号が付され返却されます。届出書を提出する時「労働保険概算保険料申告書」の提出も必要です。申告書は、保険年度末(3月31日)までの全従業員の賃金の見込額を算出、それに労災保険率(雇用保険料)を乗じて労働保険の保険料を計算します。(概算)保険料は、保険の成立した日から50日以内に金融機関で納付します。

年度更新

労働保険料の申告・納付は、保険年度の初めに概算額を申告・納付します。その後、確定額を計算、概算額との過不足を精算します。保険年度の途中で外国人が起業し事業が開始され、労働者を使用したときは、事業の開始日から3月31日までの全従業員の賃金の見込額を算出します。保険関係成立届や概算保険料申告書を提出するとき、登記簿謄本(個人事業主の場合は住民票)を添付します。

労災保険料の負担

労災保険料は、労働者に対し支払う賃金総額(通勤手当を含めた額)に労災保険料率を乗じて算出します。

雇用保険の加入義務がない「短時間労働者」とは

雇用保険は労働者の失業に対し、保険給付を行いますが、パートタイマー等の短時間就労者は、通常の労働者と比較し雇用契約期間が短く、所定労働時間も短時間であることが多いため、短時間就労者の失業が保険給付の対象となるためには、長期雇用の見込みや一定時間以上の労働時間が必要です。

短時間就労者・派遣労働者の雇用保険の適用範囲

次のいずれにも該当するとき、被保険者となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる

雇用保険とは

雇用保険法は失業を補償する制度だけでなく、高年齢者や育児休業者への給付、教育訓練への給付を行い、雇用の総合的な機能の保険制度です。雇用保険は強制保険制度で労働者を雇用する事業は、業種・規模を問わずに適用事業となります。

雇用保険の適用除外

適用事業に雇用される者であっても、老齢・退職年金を受給できること、就労時間もしくは雇用期間が短いことや他の制度で失業時の保護が受けられる等の理由で雇用保険の適用から除外される場合もあります。

オーバーステイをしている外国人

日本の外国人は、国籍や在留資格を問わず、雇用保険の被保険者となりますが、外国公務員や外国の失業補償制度の適用を受けている者は、日本の失業給付は適用除外となります。オーバーステイの外国人は国籍を問わずに労働基準法も適用され、労働基準法の災害補償の給付となる労災保険も適用となりますが、雇用保険は平成19年から外国人労働者の雇入れや離職時、外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等をハローワークに届け出ることが義務付けられているため、オーバーステイの外国人に限らず、就労可能な在留資格を所持しない者は加入手続をすることができません。

雇用保険の手続き

適用事業所設置届

雇用保険は、事業所を設置したとき、労働者を採用したときや労働者が退職したときの事業主が行う手続です。雇用保険の適用事業所に雇用される労働者は、法律上、雇用保険の被保険者となります。適用事業所設置の届出を提出するとき、労働基準監督署に「労働保険保険関係成立届」の提出や労働保険料の概算保険料の申告を行い、労働保険番号のついた成立届の事業主控えを添付します。提出期限は、労働者を雇用した場合、その日の翌日から起算して10日以内に事業所管轄の公共職業安定所へ「雇用保険適用事業所設置届」を提出します。

資格取得・喪失届

労働者を雇用した場合、労働者として雇用した日の属する月の翌月10日まで「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所管轄の公共職業安定所に提出しなければなりません。退職して資格喪失の届出を提出するとき、退職理由が重要です。退職理由が被保険者の自己都合、定年、契約期間満了によるものか、倒産、リストラ、事業の縮小等、会社都合によるものかで、失業後に受ける基本手当が給付制限を受けたり、所定給付日数に影響します。退職する場合、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」を届け出ます。

被保険者であることを問わない外国人に係る雇用保険の届出

外国人労働者の雇用管理の改善及び再就職支援の努力義務

平成19年より、事業主に対し、外国人労働者の雇用の改善や再就職支援の努力義務が課され、外国人雇用状況の届出が義務化されました。事業主は外国人労働者に労働関係法令や社会保険関係法令を遵守することを基本とし外国人労働者の募集や採用の適正化、適正な労働条件の確保、労働保険・社会保険の適用を定めています。

外国人雇用状況の届出義務

平成19年から事業主に外国人労働者の雇入れや離職時、外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等を確認、公共職業安定所へ届け出ることが義務となっています。