不法滞在(オーバーステイ)の外国人と結婚することはできます。ですが、婚姻と在留資格取得は別の問題です。婚姻したからといって、あたりまえに配偶者ビザが取得できるわけではありません。また、地域によっては婚姻届提出の際に不法滞在だということがわかれば、役所が通報することもあるようです。
不法滞在の外国人と結婚したら
不法滞在は、退去強制の可能性があります。
不法滞在のままで日本人との婚姻が数十年間継続されいたとしても、同様です。
不法滞在者との国際結婚後の選択肢は?
外国人配偶者が不法滞在の場合、多くは在留特別許可を希望します。
退去強制手続を前提として在留特別許可を申請
国際結婚後、日本で結婚生活を営むことを考えるのであれば、退去強制手続を前提として在留特別許可を申請する。
外国人配偶者が不法残留の場合、日本にいながら在留資格の申請を行うことができ、在留資格が与えられる可能性がありますが、結果が出るまでに数年かかる場合もあり、その間就労できません。
また、在留特別許可を希望するための退去強制手続を受けて帰国した場合や、最終的に在留特別許可されなかった場合、出国命令制度は適用されず、最短でも5年間の上陸拒否期間となります。
在留特別許可とは
不法残留者(オーバーステイ)などで退去強制事由あたり、退去強制させなければならない者を、事情を考慮して例外的に日本の在留を認める在留特別許可があります。
在留特別許可を受けるには、退去強制手続きが前提となります。退去強制手続きのなかで、日本に滞在したい旨を申し出ることになります。
決定を行うのは法務大臣で、在留特別許可は法務大臣の裁決の特例です。在留特別許可が認められない場合は、退去強制令となります。
日本人との婚姻が成立すれば在留が特別に許可されるといったものではありません。
一般的に在留特別許可が許可されやすい事例
日本人と婚姻していても在留特別許可がおりずに退去強制となることもあります。逆に、婚姻関係などがなくても長期間不法残留していた外国人家族に許可される場合もあります。
在留特別許可を申し出るには
在留特別許可制度は、退去強制手続中に法務大臣から与えられるもので、これを得るための書類や申請フォームはありません。つまり、在留特別許可申請という申請はありません。
入国管理局では、退去強制手続きを前提に在留特別許可を希望する人に対して、準備する資料や記入するフォームなどを用意しています。記入フォームは入国管理局により異なることもあります。書類の内容や記載方法などは変更されることがあるため、在留特別許可を希望する場合、事前に問合せをしたほうがよいでしょう。
在留特別許可は、退去強制手続きを行った者に対してのみ開かれる選択肢となります。ただし、在留特別許可がおりなかったら、退去強制となります。
出国命令制度によって一時帰国する場合
外国人配偶者を帰国させ、再度日本に呼び寄せる。
出国命令制度を利用して、外国人配偶者を帰国させ、再度日本に呼び寄せる方法です。
帰国後の上陸拒否期間は1年となり強制退去に比べて短くなりますが、その間は夫婦が海外に別れて暮らす必要があります。
ただし、上陸拒否期間が経過したことと上陸を認めることは別で、帰国後に在留資格認定証明書の交付申請をしても必ず許可されるとは限りません。「日本人の配偶者等」の在留資格を申請するには二国間をまたいでの婚姻生活の継続性なども審査されますので、相手国での一定期間の同居が可能で、頻繁に渡航できる時間と費用が必要になります。
出国命令制度とは
日本に滞在する不法残留者に自主的に出頭させ、出国させるための措置です。
条件を満たし、自ら出頭した不法残留者は、身柄を収容せずに日本から出国が可能です。帰国後は上陸拒否期間が5年間(10年間)となるところを1年間に軽減されます。
ただし、すべての不法滞在者が出国命令制度の対象となるわけではありません。
出国命令制度の対象
出国命令制度に該当した場合、出頭から2週間ほどで出国が可能となります。出頭時にはパスポート(身分証明書など)や外国人登録証明書、帰国の航空券、予約確認書などを持ち、出頭します。
何もしないで不法滞在のまま結婚生活をおくっている場合
将来的に日本で生活をすることが出来なくなる可能性が高く、配偶者の解決を先延ばしにするだけです。
解決に向けて、いますぐ行動を起こすべきです。
退去強制とは
外国人を日本の外に強制的に退去させます。国際結婚に関連する主な事例は次のとおりです。
不法残留(オーバーステイ)してしまった者などは、退去強制手続を受け日本から出国させられます
どんな人物の入国を拒否し退去強制させるかは、国際法上、各国の裁量権に任され、日本政府が強い権限を持ちます。
しかし、日本では、国内に長年、適正に在留している外国人に対し、何の理由もなく退去強制を命じることはありません。
退去強制手続きの流れ
入国警備官が違反調査を行い、違反事実の有無を明らかにします。
違反調査は、第三者からの通報、容疑者本人の申告、それに入国警備官が現場で確認した場合など、疑いが発生した場合は入国警備官が違反調査を行います。
違反調査で退去強制に該当する根拠がある場合、入国警備官はその外国人を収容します。「収容前置主義」といって、容疑者はすべて収容されます。
収容期間
収容期間は30日以内ですが、理由があれば、さらに30日延長できます。
調書や証拠物に基づき、外国人が退去強制事由に該当しているかどうか、出国命令対象者に該当しないかどうかを審査します。
審査で退去強制事由に該当しないことが明らかになれば、すぐにその外国人を放免しなければなりません。
退去強制に該当すると認定されたら
入国審査官は「口頭審理の請求ができる旨」を知らせ、審査の結果を書面で伝えます。
退去強制事由に該当すると認定した場合、入国審査官はその外国人に対して「口頭審理の請求ができる旨」を知らせ、審査の結果を書面で伝えます。
その外国人が口頭審理の請求をしない場合、速やかに退去強制が行われます。
口頭審理の請求をした場合
審理で認定に誤りがあり「退去強制事由に該当しない」となれば、すぐにその外国人を放免しなければなりません。
認定に誤りがない場合、特別審理官はその外国人に対して異議の申出ができると知らせ、判定の結果を伝えます。
その外国人が異議の申出があれば、法務大臣は再検討します。
異議の申出
このような不服があり、異議を申し出るには、その理由を示す資料を提出します。
異議の申出が認められれば、その外国人は放免されます。
異議が認められないときは、退去強制令書が発付されます。
異議の申出が認められなかった場合
異議の申出が認められなかった場合においても、以下の場合は、法務大臣は在留を特別に許可することができます。
国際結婚で在留特別許可を受ける場合、その大半が「法務大臣が特別に在留が許可されるべき事情があると認めるとき」の理由に該当するものです。許可されるべき事情を法務大臣に証拠と共に伝えましょう。
在留特別許可に係るガイドライン
「在留特別許可に係るガイドライン」が公表。在留特別許可に関する、おおまかな指針が示されています。
在留特別許可が得られるかどうかは、このガイドラインを参考にして判断されます。また、平成22年4月に法務省は、在留特別許可された事例とされなかった事例について公表。判断基準等は公表されてません。
まとめ
不法滞在は違法です。だからといって、そのままにしていては問題はいっこうに解決しません。不法滞在であることを申し出たうえで、日本に在留したい理由があるときちんと説明することで、道が開けることがあります。専門家に相談する際は、包み隠さず、すべてを打ち明けることをおすすめします。審査で隠していたことが明るみになってしまった場合、専門家も手助けをすることができなくなってしまいます。不法滞在に至った理由や経緯は人それぞれ。知り合いに許可が出たからといって全く同じ方法で手続きしても、許可がおりるとは限りません。強制退去になった場合でも、また日本に上陸するためにできることはいっぱいあります。そういった方々に寄り添う専門家がたくさんいますので、この問題は専門家に相談することをおすすめします。